マスターズドリームの客層は、経済的に余裕がある40〜50代のシェアが少し高めだという。2020年の酒税法の改正は、改正以前は最も安い新ジャンルのビールとは49円の価格差があった。それが、段階的に価格差がなくなり、2026年には酒税の価格差はなくなる。この流れは、マスターズドリームのような高級路線のビールには追い風だ。
竹腰氏は「酒税は1本化しますが、ビール、発泡酒といったカテゴリーによる価格差は残っていくと考えているので、プレモルやマスターズドリームの位置付けは今とあまり変わらぬ状態を維持していくでしょう」と話す。
しかし価格という意味ではウクライナ侵攻など世界情勢の変化により、あらゆるところにコストアップの波が訪れている。今後もさらなる値上げがあると考えた方が自然だ。例えば、最高級ファッションブランドのエルメスであれば、値上げしても気にする人は多くない。マスターズドリームもさらに高級感を創出できれば、値上げに強いビールとなるはずだ。竹腰氏は「まさにそれがブランドとして、身につけないといけない部分です」と話す。
マスターズドリームは、350ミリリットルで270円(税抜)前後というプレミアムの価格帯だ。にもかかわらず販売する場所は、スーパーマーケットなどが中心となる。つまり1円でも安く買おうとする人が多い中、高級品を売らなければならない難しさがある。この顧客心理を踏まえながらどう販売するのか。
竹腰氏は「実は、課題と感じているところはそこです。ビールというカテゴリーは、乾杯用をはじめ、のどごしの良さを意識されているイメージがまだまだ強いです。ビールにかける価格帯はこれぐらいというのが、お客さまの頭の中にあります。だからこそ5円、10円を大事にして選択されますね」と実情を話す。
松野課長は「消費の2極化が起きています。いいものにはお金をかける一方で、かけないときには、できるだけ安く済ませようとします。私たちはプレミアムビールの最高峰と思って提供していきたいので、設定した価格の価値をどう伝えていくかが本当に難しいところです。お客さまとコミュニケーションをしながら、いろいろとトライしていくしかないと思っています」と答えた。
このようにマスターズドリームは、地道にブランド価値の向上に努めていることが分かった。足立氏は学生時代、陸上部に所属していてお酒自体が遠い存在だったそうだ。しかし、サントリーで宣伝の仕事をする中で、背景を知ると自然とビールがおいしくなったという。マスターズドリームがさらに飛躍するには、このビールのストーリーを知ってもらうためにお客との接点をどう増やし続けるかが1つの鍵になっている。
RISING BALL BARという企画は、正しい方向を向いた取り組みだと言える。「とりあえずレモンサワー」の世代が、プレミアムビールを購入する年齢になった際に「とりあえず生」に変わっているのか? 同社の今後の取り組みに注目したい。
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