こうしたセブンの低価格戦略の背景には、コンビニ各社の戦略がある。
例えば、ローソンやファミマは、値段はそのままで内容量を増量させるセールを頻繁に行っている。特にローソンの「盛りすぎチャレンジ」は、その見た目のインパクトも相まって、「ローソンやばすぎ」とSNSなどで紹介されることも多い。ローソンはこの企画を2023年2月から断続的に実施しており、この6月も4週間にわたって商品を変えながら行っている。想像を絶する量の焼きそばや、生クリームが文字通り“山”のように盛ってあるロールケーキなど、6月のセールも話題性抜群だ。
また、ファミマも2021年から「40%増量作戦」という大盛り企画を実施している。こちらも、巨大なファミチキが話題になるなど、さまざまな商品の増量ぶりが世間を騒がせた。
こうした競合他社に比べると、セブンは「価格競争」という点で出遅れてしまった印象が強い。もともとセブンは高付加価値の食品に力を入れており、低価格とは異なる戦略を取っていた。ただ、コロナ禍以後、圧倒的な地位を誇っていた日販(1店舗当たりの1日の売り上げのこと)においてローソンとファミマがじりじりと迫ってきたことや、最近の決算が好調ではないことなどもあり、焦りを覚え始めたようにも見える。
特に2024年は、セブンの商品の一部が「上げ底」だという疑惑が多くのメディアで報じられ、記事へのコメントやSNSなどでセブンに対する不満が噴出した。この疑惑について、『週刊文春』が元セブン-イレブン・ジャパン社長の永松文彦氏に取材した際、「本当に上げ底になっているのかご覧になりましたか? なっていませんでしょう?」「ネットに投稿する方は、事実をもって投稿してほしいですね……」などと発言したことで、さらに評判が悪くなってしまった。
これと同時に、カナダのコンビニであるアリマンタシォン・クシュタールからの買収提案と、それに対する攻防戦が勃発(ぼっぱつ)。これにより、セブン&アイ・ホールディングス全体で経営のぐらつきが見られたことも悪影響だった。
こうした一連の騒動があった2024年の秋ごろから、セブンは「うれしい値!」という安価な商品ラインの拡充などで、客足の回復に努めた。しかし、結局2025年2月期の業績は減益となってしまった。
こうした流れの中で、今回の「おにぎり・寿司スーパーセール」は実施された。セール開始前にはコメの価格が上昇し、政府の備蓄米放出により店頭に古米が並び、消費者が列をなす場面も見られた。こうした社会的背景を踏まえ、セブンは「このタイミングでおにぎりの値下げをすることが、来店の起爆剤になる」と判断したのだろう。
なぜ「カレー店」の倒産が続くのか 個人店を追い詰めるチェーンの戦略
「麻布台ヒルズ」はなぜ批判されるのか? 森ビルが“共感されにくい”理由
「廃虚アウトレット」の乱立、なぜ起こる? 絶好調なモールの裏で、二極化が進むワケ
「紅茶戦争」の幕開け? セブンやスタバが注力するティー業態の裏側
「中野サンプラザ 白紙化」の衝撃 なぜ再開発は止まったのかCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング