なぜユニクロは万引犯を“訴える”のか? 裁判も辞さない背景に何が(3/3 ページ)

» 2025年07月01日 08時45分 公開
[産経新聞]
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「今後増える」

 ファーストリテイリングの広報担当者は、万引の被害件数や被害額、万引被害を含む商品の「不明ロス率」は公表できないとしつつ、数年前からスタッフの再教育や防犯カメラ設置などの対策を進め、「状況はずいぶん改善された」と説明。それでも続く万引被害に「撲滅に向けたさらなるステップ」として、民事手続きの強化に踏み切ったと明かす。

 機構の土門事務局長は万引が多発する現状から、同社のような賠償請求が「今後増えてくると思われる」とし、機構としても「賠償請求の相談やサポートをしていきたい」としている。

「分単位の人件費まで請求」賠償請求20年続ける書店チェーン

 万引犯への賠償請求を長年実施してきたのが、東海地方を中心に書店約65店舗などを展開する「三洋堂ホールディングス」(名古屋市)だ。各店には賠償請求を告知するポスターを掲示。請求の導入により万引被害を含む商品の「不明ロス」は大幅に減ったという。

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 同社によると、万引犯に対する賠償請求は20年前から実施。請求対象は回収後に廃棄される被害品の実費に加え、警察での事件処理などに要した人件費も含まれる。同社の担当者は「確保した万引犯を警察に連れて行っても、従業員は数時間拘束される。そのコストも分単位で万引犯に請求している」と強調する。

 同社のまとめでは、令和6年度の万引に関する賠償請求は87件、計約621万円。回収できたのは75件、約574万円で、このうち人件費部分は計82万円余りだ。同社は毎年、回収した人件費については「万引対策に広く役立ててほしい」として、同社も加盟する全国万引犯罪防止機構に寄贈しているという。

 賠償請求を導入する前は、商品の不明ロス率が1.1%前後だったが、導入から20年を経てロス率は書籍で0.5%台となるなど、抑止効果が出ているという。同社では各店長にロス対策に関する同機構の民間資格「ロス対策士」を取得させ、「店長になれば賠償請求のノウハウを身につけなければならないようにしている」(担当者)という。

不明ロス 

 小売業で棚卸しをする際、実際の在庫数が帳簿上の在庫数と一致せず、原因が特定できない損失部分。令和6年に全国万引犯罪防止機構が実施した実態調査によると、回答企業は不明ロスの原因(推定)として、万引41.4%、管理の誤り38.0%、従業員の窃盗2.7%などを挙げている。

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