記事の冒頭で「会議で議論がかみ合わない」という事象を取り上げましたが、これはシステムコーチングでよく扱われるテーマです。
例えば、アイデアブレストの会議で、あるメンバーが「顧客の潜在的なニーズに応える、これまでにない体験を生み出したい」と熱意を込めて語っているのに、別のメンバーがすぐに「それは開発コストに見合わない」「現行のシステムでは対応できません」と、具体的な実現可能性や予算の話に終始してしまい、議論が袋小路に入ってしまう──。
話しているトピックは同じはずなのに、視点が全く違うために対話が成立しない。システムコーチングでは、これをコミュニケーションの「現実レベル」がずれていると表現します。現実レベルとは、扱っているトピックや視点などを総合したものを指し、主に以下の3つのレベルがあるとされています。
合理的現実レベル
誰もが合意できる客観的な事実や情報、データなどです。時間、お金、タスクの進捗などが該当します。ビジネスの場では、このレベルでの会話が中心になりがちで、事業目標やKPIなどの数字がこれに当たります。
ドリーミングレベル
個人の内面にある思い、願い、感情、葛藤、動機など、目には見えない主観的な世界です。「本当はこうしたいと思っている」「この状況にもやもやする」といった感情や願望がここに属します。人がエネルギーをもって動くためには、数字や事業目標にひもづく感情である「ドリーミングレベル」のデザインも必要です。
エッセンスレベル
ひらめきや直感、言葉にならない感覚や予感など、個人を超えたより深いレベルの気付きや本質的な部分を指します。体に感じる「ゾワゾワする」「何か引っ掛かる」といった感覚もこのレベルから生じることがあります。言葉にできない文化や雰囲気、その場に漂う空気感や質感もこのレベルの現実です。
ビジネスシーンでは合理的現実レベルの会話が中心となりますが、システムコーチングでは、ドリーミングレベルやエッセンスレベルでのコミュニケーションも重視しています。合意的現実レベルのやりとりは重要ですが、それだけでは表面的な問題解決に終始し、チームメンバーの深層的なモチベーションや、真にクリエイティブな発想が生まれにくくなるというデメリットがあります。
特に心理的安全性が低い場では、ドリーミングレベルやエッセンスレベルでの発言は難しくなり、結果として合理的現実レベルの会話に終始してしまいやすいです。それだけにこのような「3つの現実レベル」を意識することは、対話の質を高める上で非常に重要です。これが物事を「自分ごと化」できるか、つまり「しっくり」くるかどうかに直結するのです。
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企業風土は「会議」に表れる 本音を話せるミーティングをつくるためのルールCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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