LUUPやLimeのようなシェアリングサービスは、普及させたい企業と、空地を活用したいオーナーの意向が一致し、設置場所が増えている。
ビルオーナーや土地所有者はポートを設置するだけでよく、電池交換などの作業は運営側が行う。LUUPの場合、10台前後の設置で数千円程度の収入が相場とみられる。額面の収入ではなく、LUUPの設置による集客効果を期待するアパート経営者や飲食店も多いのだろう。
Agooraが2024年に実施した調査結果によると、電動キックボードの将来的な利用意向がない人は6割強で、一定の拒否感があるのも事実だろう。特に危険性を懸念する意見が多い。危険性は単なるイメージではなく、実際に数値にも現れている。
警察庁によると、改正道交法が施行された2023年7月〜2024年6月の1年間で、特定小型原動機付自転車の検挙件数は約2万5000件、交通事故も200件超となった。2022年と比較すると、事故件数は5.3倍に膨らんでいる。検挙件数では通行区分違反が最も多く、次点が信号無視だ。移動手段というより、娯楽目的で使用する若年層も多く、利用者のマナーに問題があるようだ。
前述の法改正にはLuupやLimeが参画する業界団体「マイクロモビリティ推進協議会」が関わっており、ロビイングを通じて法改正に至ったと言われる。Luupは元警視総監を監査役に迎え入れたことや法改正の背景もあり、また無免許運転可能な点からも電動キックボードを批判する意見は多く、一部からの忌避感にもつながっている。
業界各社は新たなモビリティとしての普及を目指すが、日常的な交通手段として定着するかは不透明だ。
さまざまなアンケートで見られる電動キックボードの利用目的で最も多いのが散歩や観光などの娯楽的な手段である。移動手段として考えた場合、20分で200〜300円台であれば、電車やバスの方が遠くまで行けるため、交通網の発達した日本の大都市圏で優位性は低いのではないか。
また、カバンなどを持ちながら乗るのは危険であり、会社員や買い物客が利用する場面は想像しにくい。危険性を指摘されながらも娯楽客が多い、都内を走るインバウンド向けゴーカートのような存在に落ち着くのではないだろうか。
【お詫びと訂正:2025年7月23日午前5時の初出で、Luupの社名が間違っている箇所がありました。7月23日午前11時20分、該当箇所を修正いたしました。お詫びして訂正いたします。】
山口伸
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 X:@shin_yamaguchi_
危険運転やマナー違反だけではない LUUPが「悪目立ちする」存在になった2つの理由
「電動キックボード」の問題は何か メリットとリスクを考えるCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング