HR Design +

「失敗したデータこそ宝」 AI面接官に全社向けAIツール、キリンHDが気付いた全社DXの真髄(1/4 ページ)

» 2025年07月31日 08時00分 公開
[仲奈々ITmedia]

 人手不足が深刻化する中、多くの企業が採用活動の効率化と質の向上という相反する課題に直面している。特に人気企業では、膨大な応募者一人一人と向き合いながら、いかに公平で的確な選考を行うかが大きな悩みの種だ。

 さらに、生成AIの急速な普及により、日常業務に加え、採用活動へのAI活用も待ったなしの状況にあるといえる。「生成AIを導入したいが、どこから手をつければいいのか」「従業員や候補者に受け入れてもらえるだろうか」といった不安を抱える企業も少なくないだろう。

 こうした課題に対し、キリンホールディングス(以下、キリンHD)は独自のアプローチで解決の道筋を示している。同社は2024年10月に「AI面接官」のトライアルを開始し、2026年卒の新卒採用から本格導入に至った。

 また、2025年5月からは独自開発の生成AIツール「BuddyAI」を導入し、国内従業員約1万5000人に展開。導入から2カ月ほど経った現在、約7割の従業員が「一度はBuddyAIを使ったことがある」状態だという。

 多くの企業が生成AIの導入に苦戦している中、なぜキリンHDはスムーズな対応が実現できているのか。デジタルICT戦略部の後藤遵太部長、人材戦略部の福井直幹部長、人材戦略部の根津拓登氏(人材開発担当)が、生成AI活用の具体的な成果と導入成功の秘訣を語った。

kirin 左から根津拓登氏、福井直幹部長、後藤遵太部長(編集部撮影)

キリンが気付いた全社DXの真髄とは?

 キリンHDがAI面接官の導入を決めた背景には、多くの人気企業が抱える採用活動の構造的な課題があった。根津氏は、従来の採用活動が抱えていた限界をこう説明する。

 「採用活動においては、できる限り多くの学生と時間をかけて面接し、多様な観点で見極めをしたいと考えています。しかし実際には、コース別採用やワークショップなどを含めて年間約2万件もの応募があり、学生一人一人に十分な時間を割くことが物理的に困難でした」(根津氏)

kirin 提供:ゲッティイメージズ

 加えて、人間による面接は、どれだけ工夫しても評価者の主観が入ってしまう。面接官の体調や疲労度によって評価にばらつきが生じることもあり、こうした偏りをゼロにすることは難しい。

 これらの課題を解決するため、同社は2024年夏頃からAI面接官導入の検討を開始。同年10月にトライアルを実施し、その結果を踏まえて2026年卒の採用活動から本格導入に踏み切った。AI面接官という新たなアプローチにより、時間的制約と評価の偏りという、2つの根本的な課題の解決を目指したのである。

       1|2|3|4 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アイティメディアからのお知らせ

SaaS最新情報 by ITセレクトPR
あなたにおすすめの記事PR