金融・Fintechジャーナリスト。2000年よりWebメディア運営に従事し、アイティメディア社にて複数媒体の創刊編集長を務めたほか、ビジネスメディアやねとらぼなどの創刊に携わる。2023年に独立し、ネット証券やネット銀行、仮想通貨業界などのネット金融のほか、Fintech業界の取材を続けている。
「ユーザーにとって不利なものを特定の資本の関係で進めるのは中立ではない」――。8月1日付でマネーフォワードホームの新社長に就任した金坂直哉氏は、今回の独占インタビューの中で、三井住友カードとの合弁における「中立性」の捉え方をこう語った。
1700万人が利用する家計簿アプリ「マネーフォワードME」。現在は三井住友カードとの合弁会社として運営されているが、ユーザーの間では「中立性が損なわれるのでは」との懸念も根強い。一方で、SMBCグループの金融スーパーアプリ「Olive」との連携により、新たな成長の道も見えてきた。
PFM(個人資産管理)サービスが頭打ちになる中、「第二章」に挑むマネーフォワードホーム。新社長が語る戦略の全容とは。
マネーフォワードMEは、マネーフォワードが2012年の創業時から手掛けてきた祖業である。複数の金融機関の口座やクレジットカードの利用履歴を一元管理し、家計の全体像を「見える化」するPFMサービスとして、着実にユーザー数を増やしてきた。
しかし、その成長の裏には課題もあった。他事業と比べると、成長率で見劣りしていたのである。マネーフォワードの法人向け会計サービスが年率40%で伸びる一方、PFMサービスの成長率は20%前後にとどまり、ホーム事業の売り上げは、全社売上の約1割にすぎなかった。
転機は2024年7月17日に訪れた。三井住友カードとの資本業務提携を発表し、マネーフォワードは個人向け事業を「マネーフォワードホーム」として分社化。同年12月には、マネーフォワードが51%、三井住友カードが49%を出資する合弁会社として、新体制がスタートした。
マネーフォワード創業者の辻庸介氏は、この決断を「創業以来12年間で最も大きな意思決定」と説明する。一方の三井住友グループも、Oliveの利用者がサービス開始からわずか2年で500万アカウントを突破するなど急成長中だ。両社の強みを融合し、PFM市場の再拡大を狙う構図が生まれた。
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