試作品をつくったところ、社内で賛否が分かれました。「カニやサバをリアルに再現すると、『ちょっと気持ち悪い』という声もありました。でも、そのくらいインパクトがないと意味がない。普通の長方形では埋もれてしまいますから」(酒井さん)
ポップジャパンはこれまでも、牡蠣(カキ)の形をしたクッションやお手玉など、遠目には本物に見える布製品を手掛けてきました。今回の変形のぼりは、そのノウハウを販促物に応用した形です。
現状の課題は、製造コストにあります。変形のぼりは、1枚5500円から(デザインによって変動)。一般的なのぼり旗が1枚1000円前後であることを考えると、5倍ほどの価格です。
理由は、複雑な形に沿った裁断や縫製を手作業で行うため。量産体制はまだ整っておらず、導入は話題づくりを狙う店舗などに限られます。
「まずは試験的に使ってもらい、反応を見たい。SNSでの投稿や問い合わせが増えれば、次の展開が見えてくると思います」(酒井さん)。複数の会社から問い合わせはあるものの、市場にはまだ出回っていないので、導入効果の検証はこれからです。
また、インバウンド需要にも期待がかかります。文字を読まなくても形で内容が伝わるため、外国人観光客向けの店舗とは相性が良いと見ています。
変形のぼりは、従来ののぼり旗と同じく「店の存在を知らせる旗」である一方、その役割は変わりつつあります。風に揺れるサバの横で、本物の猫がじっと狙っていた──なんて日が来るかもしれません。
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