私がコンサルティングの現場で発見した不思議な言葉。それは、
「せっかくだから」
「そこまで言うなら」
この2つである。
「せっかくだから、いただこうか」
「そこまで言うなら、1つ頼むよ」
営業が提案した後、顧客がその気になるケースだ。断れなくなった瞬間の言葉ともいえる。
ある若手営業の話をしよう。彼は理路整然とした提案活動をしていた。データに基づき、ロジカルに商品の優位性を説明する。しかし、その話し方では思うように結果が出なかった。
ところが、上司から「この2つの言葉を引き出すよう話してみなさい」とアドバイスを受け、試してみると、本当に仕事が取れるようになったのだ。
なぜこんなことが起きるのか?
私がコンサルティングで困ることがある。クライアント企業の営業が「顧客が商品を購入する理由」を正しく捉えていないことだ。
多くの営業はこう思い込んでいる。
「お客さまのニーズに合った提案をすれば、必ず売れる」
売れなければニーズを捉えていないか、商品が合っていないかのどちらかだと考える。顧客をどのように「感化」させるかという発想がないのだ。
非論理的だと言われようが、これが現実である。顧客は営業から熱心に情報提供されることで、「せっかくだから」と労力を買ってくれることがある。営業の押しの強さや情熱に負けて「そこまで言うなら」と白旗を上げることもある。
もちろん、全く興味がない場合や、不要であれば購入を決めない。ところが、
「購入してもいいが、もう少し考えてからにしたい」
「他の商品も検討してみたい」
これぐらいの迷いであれば「熱意」を見せることで、決断する顧客もいるのだ。
「すみません。強引に売り込んでしまったようで」
「いいよいいよ。実は前から欲しかったんだ」
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