“抹茶バブル”の代償 製茶業の倒産・休廃業が過去最多、二極化が加速

» 2025年08月13日 07時23分 公開

 帝国データバンクが行った「製茶業(茶メーカー)」の倒産・休廃業・解散動向に関する調査によると、2025年1〜7月に発生した製茶業の倒産(負債1000万円以上、法的整理)や休廃業・解散は累計11件(休廃業10件、倒産1件)となり、前年の10件を上回って過去最多を更新する見通しだ。インバウンドをはじめとする国内外の「抹茶ブーム」によって、中小の製茶業者に予期せぬ悪影響が及んでいる。

photo 帝国データバンクは「製茶業(茶メーカー)」の倒産・休廃業解散動向の調査を行った(出所:photoAC)
photo 「製茶業」の倒産・休廃業解散件数 推移(出所:プレスリリース、以下同)

 製茶業界では近年、スイーツや菓子などへの抹茶の使用が増加し、製菓メーカーなど新たな販路を開拓した企業が多かった。2024年度の製茶業における損益動向をみると、前年度から「増益」となった企業は51.2%に上り、過去20年で最高を記録した。

photo 「製茶業」の損益動向(2024年度)

 一方で、「減益」(18.3%)や「赤字」(29.3%)といった「業績悪化」の企業も4割を超えており、収益力の二極化が鮮明となっている。世界的な「抹茶ブーム」の過熱により、大手飲料メーカーなどで需要が拡大。これに伴う原料の大量買い付けで茶葉価格が高騰し、経営に悪影響を及ぼすケースが出始めている。

増益企業とそうでない企業の二極化

 自社で茶葉の収穫から生産加工まで一貫して行える製茶業者は、抹茶やその原料となる碾茶(てんちゃ)の生産にシフトしたことで大幅な売り上げ増を達成し、高い利幅を確保している。一方、「業績悪化」となった企業では、抹茶用茶葉の高単価化を受けて、煎茶やほうじ茶などに加工するための茶葉の仕入価格が上昇。加えて光熱費の高騰も重なり、高コスト体質を強いられている。

 さらに、若年層の日本茶離れや、仏事・葬儀向け需要の低迷も背景に、リーフ茶など従来型商品の価格転嫁は難しく、特に海外輸出やインバウンド需要に乏しい業者ほど業績悪化に直面している。

photo 増益企業とそうでない企業の二極化が目立つ

 帝国データバンクは、「足元では高級とされる抹茶市場への対応を各社が進めているが、抹茶ブームがいつまで続くかは見通せない」と指摘する。そのうえで「ブランド力に加え、変化する消費者ニーズに応じた商品開発力や加工技術力を備え、高付加価値な茶葉を生産できる企業と、そうでない企業との格差が、今後さらに拡大する可能性がある」と分析している。

 なお、今回の調査における倒産は、負債1000万円以上の法的整理によるもの。休廃業・解散は、法的整理を除き、特段の手続きを取らずに企業活動が停止した状態(休廃業)、あるいは商業登記などで解散(「みなし解散」を除く)を確認できた企業を対象としている。調査期間は2000年1月1日〜2025年7月31日。

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