総務部は「縁の下の力持ち」と呼ばれることが多い部署だが、「経営層と現場の中間に立ち、社外と社内をつなぐ唯一の部署」でもある。営業や製造が現場の最前線を担う一方で、総務は全社を俯瞰(ふかん)し、経営視点で全体最適を考える立場だ。だからこそ、総務の経営層に近い距離感で物事を語れる立場は企業運営において非常に戦略的な意味を持つ。
経営層は現場の細部まで把握できない。判断材料となるのは、各部署が限られた時間の中で上げてくる情報だ。そのなかで総務が届ける一言は、ときに経営の舵を左右することもある。総務が発する情報は、単なる「報告」ではなく、経営を動かす「意思決定の材料」となる。だからこそ、経営層に対して「何をどう伝えるか」は総務の責任であり、総務の力量が問われるのだ。今回は、総務の経営層に対するコミュニケーションについて考えてみよう。
では、そもそも経営層にとって本当に価値ある総務の報告とは何なのか。それは数字やKPIといった明確な成果だけではなく、兆しやリスク、そして全社的な影響がある情報である。
例えば、法令改正や労務トラブル、設備の老朽化など、まだ顕在化していないが将来の損失になり得るリスクの兆候。あるいは現場の声をもとにした改善案や、単なる問題提起ではなく解決の方向性まで添えた提案。そしてコスト削減や業務効率化、社内活性化といった全社的に展開可能な成功事例も、経営の意思決定にとって貴重な材料となる。
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