生産台数に明暗 日産・ホンダとSUBARUで「差」が付いた根本原因(3/3 ページ)

» 2025年08月22日 05時00分 公開
[山口伸ITmedia]
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今後の懸念は“トヨタ化”か

 中国市場と対照的に、SUBARUは北米で販売台数を伸ばし続けた。以前は年間販売台数が20万台を下回っていたものの、前述の通り2024年度は66万台と3倍超に躍進している。功を奏したのが、2008年から「LOVE」を前面に出した広告戦略だ。車への愛着、家族やペットとの利用を訴求したCMを打ち出し、「家族に優しい車」というイメージを定着させた。

 1990年代後半から米国でSUVの需要が高まったことも、同車種に強いSUBARUにとって追い風となった。大きい車が好まれる現地に合わせてサイズアップを行った。全長5メートル級の3列シートで、SUBARU車の中で最大の「アセント」を北米限定で販売している。

 走行安定性に対する評価に加え、米国道路安全保険協会が実施する衝突試験で高評価を獲得し続けたことも、安全性や信頼性のイメージ確立につながった。米国でのシェアは4%に過ぎないが、日本と同じくコアなファンを獲得している。

 現状、SUBARUの世界販売台数は90万台で安定している。直近の懸念材料として挙げられるのが、いわゆる“トヨタ化”だ。2022年にトヨタのbZ4Xをベースにした「ソルテラ」を発売。2025年にも「トレイルシーカー」「アンチャーテッド」といったトヨタ車と共通のプラットフォームを用いた車種を公開した。

2025年7月に公開したアンチャーテッド(同前)

 こうしたSUBARUのEVはいずれもトヨタとデザインが類似しており、見分けがつきにくい。そもそもトヨタはSUBARU株を2割保有しており、EV開発はトヨタに頼っている状態だ。特色である水平対向エンジンを搭載できないため、SUBARUのEVはニーズが低いかもしれない。独自のSUBARU車を好むファンも多いだけに、過度なトヨタ化は顧客離れにつながってしまう可能性もある。

著者プロフィール

山口伸

経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 X:@shin_yamaguchi_


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