SUBARU(スバル)が米国で着実に成長している。全世界の年間販売台数は、2017年3月期に100万台を超えた。そのうち米国の販売台数は全体の6割以上を占める約67万台。10年間で約3.5倍に増やし、その成長をけん引している。
なぜ米国で販売が好調なのか。その背景には、顧客との密接な関係づくりを重視するマーケティング戦略があった。
スバルが米国で販売台数を伸ばし始めたのは、08年。リーマン・ショック後に需要が拡大したスポーツタイプ多目的車(SUV)の車種をそろえていたことなどが寄与し、翌年から9年連続で過去最高を更新。08年に約18万台だった販売台数は、60万台を超える規模に拡大している。
「08年当時、米国内のシェアはわずか1%でした」と振り返るのは、現地法人Subaru of America(SOA)マーケティング責任者のアラン・べスキー氏。「米国内に40ものブランドがひしめく中、機能やスペック、セールスイベントなど、他社と同じようなPR戦略を取っていた」ことから、販売台数を伸ばすことができずにいた。
そこでSOAは徹底した顧客調査を始める。まず、スバル車を購入しなかった人を対象に、その理由を調べた。すると、「私たちが思っていた理由ではなかった」(べスキー氏)。スタイリングや機能などを挙げる人は少数。大多数は「スバルをよく知らないから」。まずは認知度を高めることが必要だった。
そして、スバルオーナーの傾向を分析してみると、あるキーワードが浮かび上がった。それは、自分のクルマに対して使う「Love(ラブ)」という言葉だ。「収入も学歴も比較的高く、もっと高価なブランドも買える方があえてスバルを選んでいる。しかも乗り換えるときにまたスバルを選ぶ、長期保有の傾向もあります」(べスキー氏)。あえてスバル車に乗る人たちはクルマに対する愛着が強く、クルマについて語るときに愛情を表現する。
彼らが使うキーワードをヒントに08年から始めたのが、「LOVEキャンペーン」だ。値引きなどの施策ではなく、人生に寄り添うブランドであることを広告などでPRし、スバルに愛着を持ってもらうことを目指している。
どのように顧客との関係を深めているのだろうか。顧客との接点となっている販売現場を訪れ、SOAや販売店の取り組みについて聞いた。
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