雪上試乗会で考えるスバルの未来池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/5 ページ)

» 2018年02月05日 06時30分 公開
[池田直渡ITmedia]

 スバルは、ジャーナリストを招いて、青森市内から八甲田山、秋田県の十和田湖を経由して岩手県の安比高原までのコースを走るアドベンチャー試乗会を開催した。

青森、秋田、岩手と、冬の東北を走り抜けるスバルのアドベンチャー試乗会 青森、秋田、岩手と、冬の東北を走り抜けるスバルのアドベンチャー試乗会

 八甲田山と言えば、明治期に陸軍が雪中行軍訓練を行い、山岳遭難史上最大の199人もの死亡者を出したという難関である。また、ルート途上には、現在でも冬期のアクセスが難しいことで知られる秘湯、酸ヶ湯温泉などもある。要するに「このルートを走破できるならば、日本中どこだって行けないとことはないでしょう」とスバルは言いたいわけで、つまるところ、条件の限られたテストコースではなく、リアルワールド、つまり本物の日本屈指の過酷な積雪ルートでスバル自慢のAWDを検証してくれという話である。

 とはいえ、最新のAWDシステム、しかもAWDを得意とするスバルのクルマで、一応は除雪作業が行われている閉鎖されてない道路で、と考えれば全く難しい話ではない。できて当然。それでもスバルがこういう企画を考えたのは、厳しい雪道でのロングドライブで、安心、安全、疲労が少ないーー可能か不可能かではなく質的な違いを実体験させたいという意図だったと思う。

日本屈指の氷雪路にて

 実際の走行では、発進加速や制動で苦労することは1度もなかった。ブリヂストンのスタッドレスタイヤ、ブリザックVRX2の性能が優秀なおかげもあって、ドライバーが低μ路とはどんなものであるかを忘れなければ、スイスイと走れてしまう。

 VRX2のグリップ性能は正直なところ素晴らしい。雪でも氷でも驚愕すべきグリップを発揮する。1つ注文を付けるとしたらインフォメーションの不足である。ステアリングに戻ってくるフィールが盤石でありすぎる。常に不安なよりはずっと良いが、盤石感にもほどがある。氷雪路に慣れていないドライバーだったら、普通の舗装路のつもりで飛ばしてしまいかねないほど安心感が高い。それは褒め言葉ではないのだ。

アクティブな運転にはしっかり応えるインプレッサだったが…… アクティブな運転にはしっかり応えるインプレッサだったが……

 本当はスリップアングルの増加とともに少しずつ手応えが低下していかないといけない。その落ち込みは舗装路より急であるべきだ。低μ路を走っているというインフォメーションをドライバーに伝えるのもタイヤの重要なミッションである。

 試乗にはインプレッサ2.0i-S EyeSightとXV2.0i-L EyeSightが供されたが、特にXVは雪道の実用車としてお勧めできるものだった。路面からの強い入力に対しての床板や内装の振動は、Bセグメント相当の安普請を感じる部分がありはしたが、全体としてわれわれが古くから知っているクルマらしいフィールであり、走っていて安心感ある、極めて親近感の強い相棒のようなクルマだと言える。

 一方、兄貴分に当たるインプレッサがどうであったかと言うと、XVほどには褒められない。Cセグメントらしい付加価値としてスポーツ性を高めたセッティングになっているのかもしれないが、ごくごく普通の速度域で思ったように曲がらない。

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