出店攻勢が頭打ちの中、小売業が生き残るための「5つの脱」戦略とは?(3/4 ページ)

» 2025年08月25日 05時00分 公開
[佐久間 俊一ITmedia]

小売業に求められる「5つの脱」

 今後は、さらに「価値勝負激化時代」へ突入していきます。競合店のPBの価格や品質のみならず、NB(ナショナルブランド)の製造力やブランド力とも勝負しなくてはなりません。それでも何とかしなくては、増収増益は達成できません。PBの売り上げが想定よりも伸びなかった場合、人件費や宣伝費、出店設備投資費という攻めの一手を打ちにくくなり、投資の循環にも影響を及ぼすことになります。

 実際に小売業大手3社のPB売上構成比と粗利率の推移を見てみると、PBだけが全ての影響要素ではないとはいえ、一定の相関性があることが分かります。

 今後PBを拡大していく上でポイントとなる点を「5つの脱」と題して整理します。

(1)脱・パッケージ替えPB

 NB商品からただパッケージだけを変えたような、利益を得ようとするPBでは決して通用しません。顧客の生活の何をより良いものにするのか、商品価値と徹底的に向き合うことが大前提です。

(2)脱・広告イメージ依存

 広告やブランドイメージだけで通用する時代ではなくなりました。顧客は商品の機能、デザイン、価格、ブランド力など総合的に厳しい目で評価し、購入を決定していることを忘れてはなりません。インパクトだけの広告に決して依存せず、商品力を中心に据えたブランディングが必要です。

(3)脱・商品部任せ

 売場担当の責務は売り上げ、商品部の責務は粗利となると、連携がうまくいくはずはありません。かといって「NBよりも品質の低い商品を売れ」といわれても、店舗は困るはずです。従って、顧客に支持されるPBを商品部と店舗担当部門が一枚岩になってつくることが必須となります。「店舗は売り上げ重視なんだから、NBを売ろうがPBを売ろうがどちらでもいいでしょ」という意識が店舗担当役員や店舗スタッフに強くあると成功確度が下がります。

(4)脱・なんとなくのPB売場作り

 PBの売上目標は前年から大きく成長する数字が据えられているのに、PB売場の広さは変わらない――これではPBの売り上げを拡大させることは難しいでしょう。PBの売上目標と売場の構成比は一定の連携を持たせて設定する必要があります。

(5)脱・PBだけの指標管理

 「PBがどれだけ売れたのか」だけを管理するのでは不十分です。PBが売れたことによる粗利貢献のみならず、他の商品の買い回り促進に寄与し、PBを目的に来店する顧客が増え、店舗全体の集客や売り上げ、ブランドイメージにどれだけ貢献したのかを定量的に管理する必要があります。小売・流通業はメーカーの商品を流通して陳列する役割ではなく、各企業の独自性や個性を商品を通じて顧客に体験してもらうのが、直近のトレンドです。

 これらのポイントのうち、(4)について好例を紹介します。次のグラフは東京都内のあるコンビニエンスストアの売場(棚)の構成です。

 各カテゴリーでPBを陳列している棚の割合を整理しました。あくまで1店舗なので参考値とはなりますが、PBの棚比率は40%という結果でした。この企業はPBの売上構成比目標を36%に据えており、実店舗の構成比もほぼ合致しており、大変良好なバランスになっています。

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