「定時以降は空調が停止」──酷暑の今、熱中症対策がデスクワークでも重要なワケ労働市場の今とミライ(2/3 ページ)

» 2025年08月27日 08時00分 公開
[溝上憲文ITmedia]

義務化された熱中症対策は大きく2つ

 もし社員が熱中症で倒れたら、事業者は責任を問われかねない。事業者が義務の内容を怠ると「6月以下の拘禁または50万円以下の罰金」が科されることになる。

 改正労働安全衛生規則とは、事業者に「体制整備」「手順作成」「関係者への周知」を義務付けるものだ。対象となるのは「WBGT(暑さ指数)28度以上または気温31度以上の環境下で、連続1時間以上または1日4時間を超えて実施が見込まれる作業」である。

netsu 身体作業強度等に応じたWBGT基準値(厚労省「職場における熱中症対策の強化について」より引用)

 WBGTは気温だけではなく、湿度や日射・輻射(ふくしゃ)など周辺の熱環境といった要因を組み合わせた指標だ。暑いと汗をかくが、汗が蒸発するときに皮膚から奪う熱(気化熱)により、深部体温を下げる。湿度が高いと汗が蒸発しにくくなり、深部体温が下がらないために熱中症リスクも高くなる。

 今回義務化された対策は、大きく以下の2つだ。

(1)「熱中症の自覚症状がある作業者」や「熱中症のおそれがある作業者を見つけた者」が、その旨を報告するための体制整備および関係作業者へ周知する。

(2)熱中症のおそれがある労働者を把握した場合に迅速かつ的確な判断が可能となるよう、

 (2-1)事業場における緊急連絡網、緊急搬送先の連絡先および所在地など、

 (2-2)作業離脱、身体冷却、医療機関への搬送など熱中症による重篤化を防止するために必要な措置の実施手順の作成および関係者への周知

 ポイントは(2-2)の措置である。厚労省が示している熱中症のおそれのある者に対する措置の例では、熱中症のおそれのある者を発見したら、作業離脱、身体冷却を行い、医療機関に搬送――という流れだ。熱中症が疑われる症状例として、ふらつき、生あくび、失神、大量の発汗、けいれん(他覚症状)、めまい、筋肉痛・筋肉の硬直(こむら返り)、頭痛、不快感、吐き気、倦怠感、高体温などを挙げている。

 また、疑いがある者を発見し、作業離脱・身体冷却後も、「返事がおかしい」「ぼーっとしている」などの意識の異常、あるいはふだんと様子が違う場合も、意識の異常ありとして取り扱い、救急隊を要請することを求めている。

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