すでに屋外の作業が多い業界では、安全衛生規則にのっとった対策を強化している。市販されている携帯式のWBGT測定器はもはや必需品となっており、宅配便のヤマト運輸は約3000カ所にWBGT測定器を設置している。
建設業の大東建託は約730台のライブカメラを建設現場に設置し、映像を本社でモニタリング。都内5カ所ではライブカメラに加えて気象計も試験的に設置し、気温や湿度などのデータによる危険度に応じて赤色のライトを点灯させて注意喚起している。作業時間中も1時間おきに15分程度の休憩を推奨している。
また、5月20日に発表された厚労省の通達では、作業中に巡視を行い、労働者の健康状態を確認し、熱中症を疑わせる兆候が表れた場合には、速やかに作業の中断その他必要な措置を講じるよう求めている。中堅建設業の人事担当者は「衛生管理者と現場の担当者が熱中症防止の観点から現場を巡視している。WBGTを用いた作業環境の確認のほか、暑さ指数に応じて休憩時間を随時設定し、万が一体調不良者が出た際の連絡方法について改めて確認している」と語る。
問題は前述したように屋内で仕事をしたり、営業などの外回りの移動が多かったりする職場だ。「うちは基本、デスクワークが中心なので関係ない」と思っている中小企業もいるのではないだろうか。
しかし、対象となる「1時間以上」、炎天下で移動する人も少なくないだろう。営業職については、活動中に異変が発生したときに社内の誰に連絡するのか、担当者を明確にするとともに、移動に使う車内にハンディファンや冷却タオルを支給するなどの措置も必要だ。当然、服装もスーツではなく、軽装でもよしとすることも命を守るためにも必要な措置だ。
オフィス内でも何らかの原因で空調が止まる可能性もあれば、定時以降は空調が停止するビルもある。あるいは暑さでヘトヘトになって帰社する社員もいる。職場にペットボトル飲料や塩タブレットを常備しておくことも必要だろう。また、企業の中には暑さ指数や気温が一定温度を超えた場合は、出社を停止し、リモートワークに切り替えるところもある。
現在の記録的な猛暑は、これまで経験したことがない。出社を強要しても、移動時間で疲れ果て、生産性は上がらないだろう。いずれ日本も中東のように午前中の早い時間に出社して仕事をこなし、午後帰宅して、夕方から再び仕事を始めるなど、働き方も大きく変わるかもしれない。
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