賃上げに限界か 実施率2年連続で低下、トランプ関税じわり影響（1/2 ページ）

[コネムラメグミ，ITmedia]

　東京商工リサーチが実施した「賃上げに関するアンケート」によると、2025年度に賃上げを行った企業は82.0％（前年度84.2％）で、80％台を維持したものの、2024年度、2025年度と2年連続で実施率が低下した。物価高やトランプ関税などの影響で、賃上げに限界を感じる企業が増えつつある。

東京商工リサーチは、「賃上げに関するアンケート」調査を行った（提供：photoAC）

今年度、賃上げを実施しましたか？（択一回答）（出所：プレスリリース、以下同）

　規模別にみると、大企業の実施率は92.6％（前年度94.0％）、中小企業は80.9％（同82.9％）で、大企業が中小企業を11.7ポイント上回った。前年度との差は11.1ポイントであり、格差はやや拡大して過去最大となった。

産業別で賃上げ実施率が高かったのは？

　産業別にみると、最も高かったのは人手不足が深刻な「運輸業」で89.6％。大企業は100.0％、中小企業は88.2％と、いずれも10産業中トップであり、ドライバー確保に向けた賃上げの推進姿勢が鮮明となった。

今年度、賃上げを実施しましたか？（択一回答） 産業別回答状況

　次いで「製造業」が88.9％、「卸売業」が86.4％、「建設業」が84.8％だった。

賃上げ実施率が低かった産業は？

　一方、最も低かったのは「不動産業」で53.1％と唯一5割台にとどまった。大企業は80.0％だったのに対し、中小企業は49.2％と50％を割り込み、低さが際立った。背景には、成果報酬型の給与体系や、業績変動の少ない小規模な不動産賃貸業者が多いことがあるとみられる。

　さらに、物価高で転居費用や家賃が高騰し、住み替え需要が抑制されたことも賃上げを難しくしている可能性がある。

　賃上げ実施率が80％を超えたのは10産業中4産業で、前年度の7産業から減少した。前年より上昇したのは「運輸業」（0.7ポイント増）と「情報通信業」（1.9ポイント増）のみで、下落幅が最大だったのは「農・林・漁・鉱業」（11.9ポイント減）だった。