なぜジャポニカ学習帳は「今」リニューアルなのか 14億冊の歴史に2つの変化週末に「へえ」な話(2/4 ページ)

» 2025年09月06日 07時00分 公開
[土肥義則ITmedia]

わずか3年で売り上げは27倍に

 学習帳の売り上げが減って、表紙の写真を手掛けてきた写真家が亡くなった。リニューアルのきっかけとしては十分だったと思うが、社内ではさまざまな意見が飛び交った。

 「花の代わりに動物の写真はどうか」「いっそイラストだけにしよう」「写真とイラストをコラージュ風に混ぜるのはどうか」「このまま山口さんの写真を使い続けようよ」など。しかし、話がなかなかまとまらなかったのには、理由があった。「歴史」である。

 先ほど紹介したように、ジャポニカ学習帳が登場したのは1970年のことである。当時の担当者は、小学館の『ジャポニカ百科事典』(のちに休刊)に目をつけた。「ノートに百科事典の一部が掲載されていると、子どもたちは喜ぶかもしれない」といった仮説を立て、表紙はイラストではなく、百科事典に使われている写真を掲載した。

発売当初のジャポニカ学習帳(編集部撮影)

 「学習帳+百科事典」という斬新なアイデアだったわけだが、売り上げは苦戦していた。そうした状況の中で、ショウワノートはテレビCMを打つことに。ただ、広告予算があまりなかったので、ゴールデンタイムにCMを流せず、昼の時間帯に狙いを定めた。当時『女のうず潮』(朝日放送)というドラマが放送されていて、その枠でCMを流すことにしたのだ。

 お昼ご飯を食べながらテレビを見ていると、ジャポニカ学習帳のCMが流れてくる。それを見た文具店の奥さんが「なにこれ! いいじゃない!」となって、知名度が一気に上がったという。

現在の「ジャポニカ学習帳 さんすう」6マス十字リーダー入り(希望小売価格210円)

 「CMを流すだけで、そんなに売れたの? 昭和っていい時代だなあ」などと思われたかもしれないが、実はターゲットにきちんとササっていたのである。小学生のノートを買うのは、誰か。高学年にもなれば、文具店で気に入ったノートを購入することも考えられるが、低学年の場合、親と一緒に、または親が買ってくるケースが多い。

 昼のドラマを見ているのは、小学生のお母さん。そのお母さんがCMでジャポニカ学習帳を知り、店頭で購入する。こうした流れが生まれて、わずか3年で売り上げは27倍に伸びたのだ。

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