ジャポニカ学習帳の歴史を紹介する上で、どうしても外せないエピソードがある。ご存じの人も多いかと思うが、2012年に表紙から「昆虫」が消えたことである。
当時の報道を見ると、教師や保護者から「幼虫がグロい」とか「チョウチョの模様がキモい」といった声があったそうだ。こうした意見を受けて、ショウワノートは学習帳の表紙に昆虫を採用しなくなった……などと報じられた。
しかし、真相はちょっと違う。保護者からは「娘がチョウチョが苦手でして。違う表紙はありますか?」といった声があり、学校の先生からは「クラスでノートを配ったのですが、数人がどうしても昆虫がダメでして。もし違う写真があれば、それを使いたい」などの意見があった。
もうお気付きだと思うが、これはクレームではなく、問い合わせの類である。ただ、2000年代に入って、「昆虫が苦手」という声が増えていて、ショウワノートは時代の変化を感じていた。表紙から少しずつ昆虫を減らしていて、2012年に姿を消したという話である。
……とまあ、ややまわりくどい話になってしまったが、ジャポニカ学習帳は今年で発売55年を迎える。長く販売しているといろいろなことがあるわけだが、その歴史の重みによって、リニューアルがなかなか進まなかったようだ。
社内からは「緑色の表紙と写真がなくなれば、ジャポニカではない」という声もあれば、「イラストのほうがかわいい。今の子どもたちに合っている」という意見もあった。
分かりやすく言えば「伝統を守る派」VS.「今こそ変えるべき派」の構図である。「ジャポニカ=緑」「表紙=写真」「裏=解説」――。このフォーマットが長く愛されてきたので、個人的には「伝統を守る派」の意見もよく理解できる。
ただ、その一方で、売り上げが苦戦しているという課題がある。担当者の岸田愉美さんは「もしリニューアルをしなければ、存続が難しい未来が待っているかもしれません。そうなってはいけないので、このタイミングでリニューアルを決断しました」という。
そして、アイデア出しに2年、制作に3年。合計5年を費やし、ようやく生まれ変わった。寿司職人が一人前になるのに10年ほどかかると言われているが、それよりかは短い。それでも子どもが小学生から中学生に上がるくらいの年月である。
対象となったのは39種類。科目ごとに色分けして、表紙はイラスト、裏表紙には従来通り写真と解説を残した。表は令和、裏は昭和。ひっくり返すと、まるでタイムスリップしたかのような仕様である。
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