新人「議事録はAIにやらせました」何がダメなのか? 効率化の思わぬ落とし穴「キレイごとナシ」のマネジメント論(3/5 ページ)

» 2025年10月06日 08時00分 公開
[横山信弘ITmedia]

基礎知識なきAI活用の危険性

 AIとITを同じようなものだと受け止めている人はとても多い。

 「IT技術やAIをうまく活用して、もっと生産性を上げてほしい」

 などと経営者は発言するが、両者はまるで異なる。一緒くたにして捉えていると、むしろ効率の悪い仕事をすることになるだろう。

 例えばITや機械は、間違った操作をすればエラーが出る。操作方法を知らなければ、そもそも動かすことができない。

 ところがAIは違う。自然言語に対応しているため、誰でも簡単に指示・命令ができてしまう。そして何かしらの結果を出してくれる。

 これが危険なのだ。基礎知識がない人でも、それらしい成果物を作れてしまう。しかし経験が十分でなければ、その成果物が正しいかどうか判断できない。

 例えばタイのスープ料理「トムヤムクン」を作ってくれるAIがあったとしよう。しかし、たとえおいしいスープが生成されたとしても、トムヤムクンを知らない人が指示したのであれば、それが本物かどうかを検証できない。

新入社員にAIを使わせない大企業

 ある大手IT企業の事例を紹介しよう。この企業では、新入社員にAIを使ったプログラミングを禁止している。なぜか?

 生成されたコードが正しいか検証できないからだ。バグがあっても気付けない。セキュリティホールがあっても発見できない。結果として、品質の低いシステムが出来上がるのだ。

 営業支援の現場では、こんなケースがあった。

 ある企業が、AIを実装した営業支援システムを導入した。顧客データベースから情報を抽出し、最適な提案書まで生成してくれる便利なシステムだ。

 結果はどうなったか。

 学習データが偏っていたせいか、AIが顧客のニーズを正しく理解せず、的外れな提案書を作成してしまった。しかし新人の営業はAIを信じきった。顧客の正しい課題を理解せず、そのまま提案書を渡したのだ。

 当然、顧客の反応は冷ややかだった。「我が社のことをまったく理解していない」と一蹴。信頼関係が崩壊してしまった。AIは便利なツールだ。しかし魔法のつえではない。

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