新人「議事録はAIにやらせました」何がダメなのか? 効率化の思わぬ落とし穴「キレイごとナシ」のマネジメント論(5/5 ページ)

» 2025年10月06日 08時00分 公開
[横山信弘ITmedia]
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上司が果たすべき役割とは

 ただ、新入社員に問題があるわけではない。指導者が気を付けなければならないことだ。

 AIは「超優秀な新入社員」とよく言われる。だから、知識も経験も足りない新入社員が、”超優秀な新入社員”に何らかの指示を出したとしても、うまくいくはずがない。このことを上司は理解しよう。

 そのうえで、これまで通り、基礎教育の徹底をすべきだ。上司が単純な作業をAIに任せればうまくいくだろうが、それをし続けると新入社員の仕事がなくなっていく。だからといって新入社員にAIを使わせられないのだから、大事なのは、

 「AIにできることも、新入社員に任せること」

 なのだ。そうしない限り、新入社員が正しく成長することはないだろう。AIには学習させても、新入社員に学習させなければ、戦力にはならないのだから。

 ある製造業の事例を紹介しよう。

 この会社では、新入社員研修でAIを一切使わせない。3カ月間、全て手作業で仕事を覚えさせる。議事録は手書き、資料作成も一から、メールももちろん自分で考えて書く。

 非効率に見えるかもしれない。しかし3カ月後、新入社員は仕事の本質を理解しはじめた。何が重要で、何が省略可能か。これが自分で判断できるようになった。

 その後、AIツールを導入すると新入社員たちは、AIを適切に活用できるようになった。どこにAIを使い、どこを人間が担当すべきか。この区別ができるのだ。

 結果として、生産性は飛躍的に向上した。AIに振り回されることなく、AIを使いこなせるようになったからだろう。

 AIは確かに便利だ。しかし基礎知識や基本を欠いたAI活用は、砂上の楼閣といえる。

 「タイパが悪い」などと言わず、新入社員には、まず仕事の基本を身に付けてほしい。急がば回れ。基礎があってこそ、AIの真価を発揮させられるのだ。

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