最後に、オフィス移転という複雑なプロジェクトを完遂するために、総務担当者が心に留めておくべき姿勢について解説する。
一般的に経営層は、移転を投資対効果や戦略的価値で捉える。一方、社員は、日々の働きやすさや快適性を重視。両者の視点には、時としてギャップが生まれる。総務の役割は、経営層の意図を社員に分かりやすく「翻訳」し、同時に社員のリアルな声を経営判断に資する情報として「翻訳」して伝えること。両者の間に立ち、粘り強く対話を重ねて最適解を探る、その調整力こそが総務の価値だ。
無事にオフィス移転が完了しても、それで終わりではない。むしろ、そこからが新しいオフィスのスタートだ。移転後、新しい働き方が定着しているか、想定通りに施設が利用されているか、効果測定(サーベイなど)を行い、改善を続けていく必要がある。移転プロジェクトで得た知見やノウハウを形式知化し、組織の資産として次代に継承していくことまでが、総務のミッションだ。
オフィス移転は、膨大なタスクと数多くの調整ごとを伴う、困難なプロジェクトといえる。しかし、これほどまでに総務の専門性、調整能力、そして経営的視点が問われ、その価値を発揮できる機会は他にないだろう。企業の未来の働き方をデザインし、社員一人一人のパフォーマンスを最大化する環境を構築する、重要な役割を担うことを常に意識しよう。
このプロジェクトを乗り越えた先には、大きな達成感と、企業への確かな貢献、そして何よりも、いきいきと働く社員たちの姿があるはず。ぜひ、誇りと情熱を持って、この一大プロジェクトに臨んでほしい。
株式会社月刊総務 代表取締役社長/戦略総務研究所 所長/(一社)FOSC 代表理事/(一社)IT顧問化協会 専務理事/(一社)日本オムニチャネル協会 フェロー
早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルートで経理、営業、総務、株式会社魚力で総務課長を経験。日本で唯一の総務部門向け専門誌『月刊総務』前編集長。現在は、戦略総務研究所所長、(一社)FOSC代表理事、(一社)IT顧問化協会専務理事、(一社)日本オムニチャネル協会フェローとして、講演・執筆活動、コンサルティングを行う。
著書に、『リモートワークありきの世界で経営の軸を作る 戦略総務 実践ハンドブック』(日本能率協会マネジメントセンター、以下同)、『マンガでやさしくわかる総務の仕事』、『経営を強くする戦略総務』
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