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金融業界は生成AIと最も親和性が高い　米BofAに見る「AIで変わる銀行の仕事」：Payments Dive

» 2025年10月16日 07時00分公開

[Matt Ashare，Payments Dive]

　金融業界が生成AIの力を活用し、業務の迅速化と効率化を進める中で、米バンク・オブ・アメリカ（BofA）は長年の研究とテクノロジー投資を基盤に、複数のユースケースを急速に拡大している。

　同行は9月末、グローバル・ペイメント・ソリューションズ（Global Payments Solutions、以下GPS）部門向けに生成AIを活用したナレッジマネジメント・アシスタント「AskGPS」を発表した。社内エンジニアが、製品ガイドやタームシート、FAQ（よくある質問）など3200件を超える社内文書をAIに学習させたという。このツールは、同部門の約4万社におよぶ法人顧客に対して最適化された回答を提供する（9月30日の発表より）。

米カリフォルニア州サニーベールにあるバンク・オブ・アメリカ（BofA）の支社。同行は先月、AIを活用した生成型決済アシスタントを導入した（ゲッティイメージズ）

大量の資料、手作業で探す必要なくなった

　「生成AI導入前は、単なる文書検索ライブラリしかなく、答えそのものを返すことはできなかった。生成AIのようなパワーはなかった」と、BofAのGPS部門でデータ＆AI責任者を務めるジャレット・ブルーン氏はCIO Diveの取材で語った。「複雑で難しい質問には、資料を探すのに1時間もかかることがあった」という。

　AskGPSは29言語に対応しており、世界中に拠点を持つ銀行部門にとって大きな利点となっている。さらに、同ツールは新入社員のオンボーディング（初期研修）プロセスの効率化にも役立っているとブルーン氏は述べた。

　「新入社員にとって、略語や製品知識を確認する“頼れる存在”になっている。例えば会議中に『サプライチェーン・ファイナンス』という言葉や新しい略語が出てきても、もう大量の資料を手作業で探す必要はない」と同氏は説明する。

　AskGPSの構想は、商用レベルの大規模言語モデル（Large Language Model、LLM）が進化し始めた初期段階で生まれた。GPSチームのエンジニアは、設計から導入まで同行のグローバルテクノロジーチームと協働して構築を進めた。

　この共同開発により、AskGPSはスケーラブル（拡張性が高い）で安全性の高いツールとなり、同行のAI戦略全体――「複数の事業分野に利益をもたらす柔軟なツールの構築」――に沿ったものとなったと、同行の広報担当者はCIO Diveに語っている。

銀行業界に広がるAI活用

　銀行業界は、データを大量に扱う生成AIアプリケーションにとって理想的な環境である。BofAをはじめとする厳格な規制下にある金融機関は、多様なユースケースが生まれる中でも、機密データを守るための強固なガードレールを設定できる立場にある。

　「銀行業界は、AIをどのように導入すべきかを示す“青写真”だ」と、英国の調査会社Evident Insights（エビデント・インサイツ）の共同創業者で共同CEOのアレクサンドラ・ムサヴィザデ氏は語る。「この業界にはすでに、必要なチェック体制、ガバナンス、リスク管理機能がすべてそろっている」

　ムサヴィザデ氏によれば、AI研究はBofAの成長を支える原動力でもある。同行の革新への取り組みにより、7400件の特許および出願中の特許が生まれ、そのうち1200件はAIや機械学習に関連しているという。

社員と顧客の両面でAIを展開

　同行はAIの開発と導入を着実に進めている。2020年に導入された社員向けAIアシスタント「Erica for Employees」（エリカ・フォー・エンプロイーズ）は、2024年4月時点で21万3000人の社員のうち90％以上が利用。ITサポートへの問い合わせ件数を半減させたという。

　この社員向けツールは、2018年に登場した消費者向けチャットボット「Erica」（エリカ）の成功を踏まえて開発された。エリカは2024年8月時点で月平均5800万件の顧客インタラクションを記録している。さらに同行は最近、富裕層ビジネス部門にAIナレッジ管理ツールを2種類導入し、1万7000人のプログラマーがAIコーディングツールを日常業務に取り入れたという。

　「生成AIは、社外・社内の両面で業務の基盤を強化し、製品化までの時間を短縮し、プロセスをより簡単かつ迅速にするのに役立っている」と、当時消費者・事業・富裕層テクノロジー担当責任者だったハリ・ゴパルクリシュナン氏は4月のCIO Dive取材で語っている。その後、同氏は7月に最高技術・情報責任者（CTIO）に就任した。

　CEOのブライアン・モイニハン氏は就任メモの中で、「ゴパルクリシュナン氏が同行のAIポートフォリオ拡大を主導する」と述べている。