3人の事例からは、生成AIの活用が進む現場で、新人が直面している本質的な課題が浮かび上がってくる。それは、
(1)問いを立てられない(イシュー設定力の欠如)
(2)思考プロセスが見えない(ブラックボックス化)
(3)自分を俯瞰(ふかん)できない(メタ認知の欠如)
という3つの観点だ。いずれも、従来の新人育成において「経験を通じて身につけていたプロセス」が、生成AIの導入によってスキップされることで起きている。
成果は出せても、「なぜその成果が出たのか」や、「どこが良くてどこに再現性があるのか」が見えない。また、誰と何を競い、どのような成長を目指すべきなのかも見失いやすい。その結果、「成長実感」や「自信」へとつながりにくい構造が生まれている。では、新人が直面する3つの課題について、それぞれ深掘りしてみよう。
CaseAの山崎さんは、仕事の目的や課題を考える「イシュー設定力」が欠如した事例である。AIが“それらしい答え”を即座に返してくれる今、仕事の起点となる「問いを立てる力」が育ちにくくなっている。上司の指示や会議で出たテーマをそのままAIに投げかけても、それは仕事をやったことにはならない。
仕事において本来求められるのは、「なぜこれをやるのか?」「何を明らかにしたいのか?」といった本質を問う姿勢であり、そこに至るまでの前提や制約、関係者の視点を読み解く力である。しかし、生成AIが即時にアウトプットを返してくれるため、「そもそも自分は何を問うべきか」という認知が育たないまま、AIの出力だけを成果と見なしてしまうリスクがある。
この「イシュー設定力の欠如」は、経験の浅い新人に特に起きやすい。上司と新人、それぞれの目線を対比してみよう。
社会人経験が豊富な上司の場合、最終アウトプットを見た時に「何かがおかしい」と違和感を抱ける。また、メンバーのアウトプットを確認し修正する立場でもあるため、普段からツッコミを入れることに慣れている。そのため、AIのアウトプットに対して、自分なりの評価軸を基にツッコミを入れ、批判的に考察する「イシュー設定力」を持ちやすい。
一方、新人の場合、経験値が浅いため自分なりの観点(持論)を醸成することは難しい。上司と比べて自分がツッコミを入れることに慣れていないため、知らず知らずのまま「イシュー設定力」が抜け落ちてしまいやすい。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
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