生成AIは「新人の敵」に!? 現場でもうすぐ起きる3つの苦悩(4/4 ページ)

» 2025年10月24日 08時00分 公開
[村上悠太ITmedia]
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変化する新人の競争相手

 米国では既に、生成AIの影響を受けやすい一部の職種において、特に若年層の雇用の置き換えられはじめている。スタンフォード大学が、米国最大級の給与処理企業ADP(Automatic Data Processing)の2500万人超の給与データ(2021年1月〜2025年7月)を用いて実施した分析によると、生成AIの影響を受けやすい職種における22〜25歳の雇用は、2022年末から2025年7月にかけて約6%減少。同じ職種で35〜49歳はむしろ6〜9%増加していた。

 また、米国のZ世代とミレニアル世代約1000人を対象にした調査によると、Z世代とミレニアル世代の47%が、職がAIに置き換わる不安を抱えており、また約半数が「どれだけAIで仕事を進めているかを上司に言うのが不安」と回答している。

 日本でも、新人に話を聞いてみると、AIについて情報収集している人であればあるほど、AIの進化スピードを目の当たりにして、自分の仕事がAIに置き換わってしまうのではという不安を口にする。これまで、新人の競争相手は隣の席が一般的だったが、今の新人は「AIとの競争」も感じているのだ。

生成AI時代の新人育成戦略とは?

 生成AIを活用して早期から高い成果を出せる可能性が高まる一方で、AIに思考のプロセスを委ねすぎれば、「なぜそう考えたのか」「どう意味付けたのか」という成長の核が失われていく。

 本稿で見たように、生成AI時代の新人たちは

(1)問いを立てられない(=イシュー設定力の欠如)

(2)思考が見えない(=ブラックボックス化)

(3)自分を俯瞰できない(=メタ認知の欠如)

という課題に直面している。こうした課題に対し、企業はどのような新人育成戦略をとるべきなのか? 参考になるのが「Automation」(オートメーション、自動化)と「Augmentation」(オーグメンテーション、拡張)という二つの視点だ。

 Automationは、人間の作業をAIが代替し、効率化やスピード向上を目的とするアプローチである。一方のAugmentationは、AIを人の思考や判断を支援する存在として位置付け、人間の拡張することを意図するアプローチである。

m AIと人間の向き合い方(著者作成)

 本稿で見てきた新人教育の課題は、生成AIの活用において「Automation」しか意識できず、「Augmentation」の観点での活用ができていないことが背景にある。次回の後編では、この「拡張としてのAI活用」を軸に、生成AI時代における新人育成の課題に対して、企業が具体的にどのような対策をしていくべきかを考察し、具体的なアプローチを紹介する。

著者プロフィール・村上悠太(むらかみゆうた)

murakami

株式会社ディープコア 経営企画部 Director, HR Business Partner

ソフトバンクで採用・人事企画を経て、2018年よりディープコアに参画。同社の人事全般を統括しつつ、投資先AIスタートアップの採用・組織開発などのHR支援を推進。2023年にスタートアップキャリアコミュニティー「LINKS by KERNEL」を設立し、約500人の会員にキャリア支援を提供。起業家やスタートアップ参画希望者へコーチングなどの支援を行う。スタートアップや大企業の新規事業部門を主な対象に、組織開発・チームビルディングの講演・研修・ワークショップを実施。経営層から新入社員まで幅広い対象を支援。

BCS認定ビジネスコーチ、米国Gallup社認定ストレングスコーチ


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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。

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