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DX最大の壁は「過去の成功」──花王が“必勝パターン”をあえて捨て、大ヒット商品を生み出せたワケ(1/5 ページ)

» 2025年07月31日 11時00分 公開
[菊地央里子ITmedia]

 過去の成功体験に捉われるあまり、よくあるのが企業内で変革が進まないケースだ。時には過去の成功体験を捨て、思い切って新しい手法を試さなければならない。こうした学びを与えてくれるのは、経済産業省と東京証券取引所が「DX注目企業2025」に選定した花王の事例である。

 同社の常務執行役員で、デジタル戦略部門を統括する村上由泰氏は、DXは単なるデジタルツールの導入ではなく、旧来のやり方を捨て去り、ビジネスを再設計する「創造的破壊活動」と語る。その真意とは?

これまでの「必勝パターン」をリセットする

――花王は2020年に続き、2回目の「DX注目企業」に選出されました。どのような点が評価されたと考えていますか。

 花王は中期経営計画「K27」達成に向けて、世界の中で誰かにとって「欠かせない一番」になることを目標とした「グローバル・シャープトップ 」戦略を推進しています。こうした中でDXを全社的に導入し、社内にあるデータの整理・活用やDX人財の育成を通じて、データドリブン経営を加速させています。今回の選出は、DXの推進が経営戦略と連動していることや、事業活動における意思決定のスピードと質の向上への貢献などが評価されたものと考えています。

kao 中期経営計画「K27」のロードマップ(「グローバル・シャープトップ戦略」資料より引用)

――DX注目企業2025に選出されたことについて、社内からはどのような反響がありましたか。

 2020年に続き、今回で2度目の「DX注目企業」選定となったことは、当社が推進するDXが単発の取り組みではなく、経営戦略と一体となった持続的な変革であることが外部から客観的に評価されたと考えています。特に、今回の選定は、全社を挙げて取り組んできた変革の道のりが間違っていなかったという確信につながりました。

 当社のDXは、IT技術者だけでなく、例えばローコードツールなどを活用して自らの手で業務改善を進める「シチズン・デベロッパー(市民開発者)」のように、現場の従業員一人一人が主役です。こうした現場の地道な努力が、会社全体の大きな成果として認められたことは、従業員のエンゲージメントを高めました。

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