慶應義塾大学法学部政治学科卒業(首席)、同大学院法務研究科修了後、2012年司法試験に合格。複数法律事務所で実務経験を積んだ後、2015年佐藤みのり法律事務所を開設。
過失の程度や結果の重大性によっては、時代に即した適正な処分を行う──滋賀県長浜市の浅見宣義市長が示した、市役所職員の事務ミスに対する厳罰化の意向が注目を集めている。
長浜市では、昨年度から市の補助金交付や国の交付金申請などにおいて不適正な事務処理が相次いだ。同市では、単純な過失による事務ミスについて処分はしてこなかったが、こうした状況を問題視。浅見市長は9月定例月議会の提案説明において、市役所職員の事務ミスの処分を強化する考えを示した。
同市の対応に、SNSを中心に「厳罰化は法的にどうなのか」といった声も上がっている。佐藤みのり弁護士に聞いた。
――そもそも懲戒処分とはどういったものなのでしょうか。
佐藤弁護士: 懲戒処分とは、従業員が業務命令に従わなかったり、企業秩序を乱したりした場合に、制裁として行う不利益措置のことをいいます。懲戒処分の種類は「戒告」「譴(けん)責」「減給処分」「出勤停止」「降格」「諭旨解雇」「懲戒解雇」が一般的です。
懲戒処分としてどんな種類を設けるかは、法律で定められておらず、会社が自由に決められます。また、地方自治体の公務員に対する懲戒処分について、地方自治法は懲戒処分として「戒告」「減給」「停職」「免職」の4つを定めています。
――懲戒処分をするために必要なことや、実際に検討する際の流れを教えてください。
佐藤弁護士: 懲戒処分をするためには、就業規則であらかじめ、懲戒処分の種類と事由を定めておく必要があります(労働基準法89条)。懲戒処分は「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当である」と認められない限り、無効とされています(労働契約法15条)。そのため、有効な懲戒処分をするためには、
が必要になります。
そこで、会社が懲戒処分を検討する際は、従業員の起こした不祥事の内容や頻度、期間、経緯、動機、不祥事が業務に及ぼした影響、従業員の反省の程度、今までの処分歴、会社への貢献度などを総合的に考慮し、社会通念上相当な処分内容かどうか判断することが求められます。
また、過去に類似事例があれば、その事案における処分との均衡が取れているかどうかも考慮しましょう。処分対象者の意見を聞く機会を設け、手続き面でも慎重に進めていくことが必要です。
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