「建築費の高騰」も見逃せません。近年、建設業界の人手不足が顕著であり、その上で2024年の能登半島地震により大規模なインフラ整備や住宅建設などが必要となりました。また、熊本に半導体世界大手の台湾積体電路製造(TSMC)の新工場建設が決まり、大阪・関西万博のパビリオン建設など、各地で建築工事や大型プロジェクトが進み、全国的に建築関係の人手が一気に足りなくなりました。2024年4月からは残業時間の上限規制が適用されたこともあり、建設業界では深刻な人手不足が進んでおり、今もなお進行中です。
資材価格も高騰しています。建設物価調査会のデータによると、2020年と比較してあらゆる建設資材の物価指数が140%を超え、今も上昇し続けていることが分かります。これらに加えて土地などの不動産取得にかかるコストも上昇中です。
SC新規開発は利用する土地が広く、建物も大型であることから、建築資材もさまざまなものが必要です。投資コストは少なくとも数十億円から数百億円規模となります。ゼロから作って投資回収できるだけの収益も上げづらくなっている今、開発に躊躇(ちゅうちょ)するディベロッパーが増えるのも当然です。
例えばイオンモールですら、2024年度の新規開業がゼロでした。これは26年ぶりのことです。一方で改装投資に多額をかけて、リニューアルを進める再投資にかじを切っています。2024年3月には、国内最大級のSC「イオンレイクタウン」の大規模リニューアルとともに増床を行いました。
イオンモールの中でリニューアルを実施した施設は前期比109.8%の売り上げであり、特にレイクタウンOUTLETは同139.3%、イオンモール太田は150.4%の通期実績です(いずれも2024年度)。今後、国内ではリニューアルに注力し、海外の成長市場では新規開発投資を行う、といった形に分かれていくでしょう。
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