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「Z世代同士だからうまくいく」は幻想 若手任せのOJTが早期離職の引き金になるワケ労働市場の今とミライ(1/4 ページ)

» 2025年10月29日 08時00分 公開
[溝上憲文ITmedia]

 新卒社員が入社して6カ月が経過した。近年は人手不足に加え、スマホで簡単に転職サイトに登録できるなど転職環境が整った結果、早期離職が大きな問題となっている。

 エン・ジャパンが実施した「早期離職実態調査(2025)」によると、直近3年以内に「半年以内での早期離職」があった企業は57%。従業員数が1000人以上の企業は73%となった。読者の中にも「すでに新人が退職した」という人は多いのではないか。

m 直近3年以内に「半年以内での早期離職」があったか(エン・ジャパンのプレスリリースより引用)

 以前は「経験年数があまりにも短いと転職は厳しい」といわれたものだ。しかし、ある転職エージェントのコンサルタントによると、最近は「3カ月や半年未満でも、相応の理由があれば新卒枠で採用する企業が増えている。以前とは考えられないほど採用枠も広がっている」という。

「Z世代同士だからうまくいく」は本当か?

 とはいっても離職者が急激に増えているわけではない。厚生労働省が発表した新規学卒就職者の就職後3年以内離職率は大卒が34.9%(21年卒)で、20年卒の32.3%より微増している。ただし1年以内の離職率は21年卒が12.3%であるのに対し、22年卒は12.1%、23年卒は11.0%と減っており、近年の傾向としてあまり変化はないといえる。

 また、最近の新人は転職志向が強いといわれるが、少なくとも入社直後は必ずしもそうではない。日本能率協会が実施した「2025年度新入社員意識調査」によると、「定年まで一つの会社に勤めたい」という質問に「近い」と回答したのは34.2%、「どちらかというと近い」(34.4%)と合わせると68.6%と、2018年以降、最も多くなっている。一方、「機会があれば転職・独立したい」に「近い」は10.4%、「どちらかというと近い」は21.0%で、減少傾向にある。つまり終身雇用派が約7割を占めているのだ。

m 「2025年度新入社員意識調査」(日本能率協会のプレスリリースより引用)

 また、産業能率大学総合研究所が実施した「2025年度新入社員の会社生活調査」によると、年功序列的な人事制度と成果主義的な人事制度のどちらを望むのかという質問に、56.3%が「年功序列」と回答。初めて「成果主義」を上回ったことで大きな話題となったが、これも新人の長期雇用志向が少なくないことを示している。

m 年功序列と成果主義、人事制度のどちらを望むのか(産業能率大学総合研究所のプレスリリースより引用)

 その理由についてよく指摘されるのが「学生時代にウクライナ戦争や物価高などの大きな変化を経験し、世の中が不安定だからこそ安定感を求めている」という分析だ。しかし、それでも厚労省の調査では1年以内に高卒の約17%、短大等卒の約18%、大卒の約11%が離職している(23年卒)。ちなみに大卒就職者は約45万人だが、1年以内に約5万人が離職していることになる。

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