興味深いのは、コミュニケーションに最も悩んだ相手の年代は「20代以下」と回答した人が60.0%と圧倒的に多かったことだ。30代はわずかに11.3%、40代も13.9%にすぎない。しかも悩んだ相手が20代以下と回答した人の1年未満での退職が54.4%と半数を超え、30代以上の40.6%を13.8ポイント上回っている。
20代以下といえば、新人と同世代。しかも1990年代後半以降生まれは30代だが、同じZ世代に当たる。コミュニケーションが成立しないというのは不思議な感じがするが、根本的な原因はOJT(職場内教育)にあると思われる。
新卒の入社後は導入研修後、配属先でOJTが実施され、直属上司の下で、中堅の先輩社員が指導役となる。業務を通じて仕事の知識・スキルを修得させ、戦力化すると同時に、本人に成長実感を持たせることでエンゲージメントの向上を図るのが本来のOJTの目的だが、その機能が十分に果たされていない実態もある。
ALL DIFFERENT(東京都千代田区)の調査機関であるラーニングイノベーション総合研究所が実施した「人事部の意識調査(OJT編)」によると、9割以上の企業がOJTを実施している。ところが、実際のOJTでは指導役に入社2〜3年目の若手を据える企業が増えているという話をよく聞く。
なぜまだまだ新人といえる社員に指導役を任せるのか。リクルートマネジメントソリューションズサービス統括部の武石美有紀研究員は「普通は中堅の主任クラスが担当するが、会社の意図としては、新人とのコミュニケーションギャップがあることから、何を話していいか分からないということもあり、年齢が近く、話が通じやすいという配慮」だと語る。
しかし、入社2〜3年目といえば業務に精通した一人前とはいえない。入社後5年間は育成期間と位置づけている企業も多く、例えば大手自動車メーカーは入社5年目に「指導職研修」を設定。教えられる側から教える側への意識転換など、徹底した研修を実施している。
逆に育成担当者の悩みも深い。武石研究員は「教えるのが自分でいいのか、無理ではないかという不安を抱え、自信をなくす育成担当者も少なくない。調査でも、鬱になったとか、夜シャワーを浴びていてもずっと育成のことが頭から離れず休めないという声もある」と指摘する。
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