ここで大切になってくるのが、「ファシリテーション」です。リレーションシップコンフリクトを生まないためにも、「こと」と「人」の切り分けは非常に重要。問題を「こと」として扱うことで、相手を否定せずに、建設的な対話を生み出すことができます。例えば、次のような問いを投げることで、場の空気は少しずつ変わるはずです。
「この判断、何を前提にしてる?」
「今の意見、大切にしていることって何だろう?」
「この違いは、目指している理想のズレかもしれない」
ファシリテーションは、進行やルール作りだけでなく、「その場の意味や目的にまなざしを向ける」態度でもあります。システムコーチングの観点では、問題が起きたときに「関係性そのものに起きていること」へまなざしを向ける姿勢が重視されます。誰かの資質や意図ではなく、チーム全体で生まれている“ズレ”そのものに着目することが大切なのです。
ここまで幾度となく「対話が大事」だとお話ししていますが、簡単に対話が成立するわけではありません。関係性を複雑にし、対話を難しくする要因として「ランク」(Rank)の影響があります。ランクとは、地位や年齢、役職などの「目に見えない優位性や力」を指します。
(1)社会的ランク:年齢、役職、地位、経済状況などによって与えられるパワー
(2)心理的ランク:自分自身への理解や自己肯定感からくる影響力
(3)スピリチュアルランク:大きな目的や意味とのつながりからくる安心感や信念
(4)文脈的ランク:その場の知識や文脈に詳しいなど、特定の状況下でのみ発生する優位性
マネージャーを例に挙げて考えてみましょう。マネージャーはメンバーに比べて「社会的ランク」が高い存在といえます。特定の分野に詳しい人は「◯◯担当」というような役割が与えられているかもしれません。
このようにランクというのは本来、役割に伴って生まれるものですが、相手に対して無自覚にその力を振るってしまうケースも多く、相手に「押し付けられた」と感じさせたり、対話を萎縮させたりすることがあります。
だからこそファシリテーターは、その場の空気や関係性を見ながら、ランクによる影響をメタ認知し、必要に応じて場を整える必要があります。
これらの工夫によって、目に見えない力のバランスを整え、フラットで開かれた対話の場をつくることができるのです。
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