findはその後、九州旅客鉄道(以下、JR九州)とも実証実験を経て、導入を実現した。当時、JR九州では1日当たり約500件の落とし物が届けられ、電話対応件数も1000件に上っていた。
それに対応するのは社員7人程度だったため、応答率がそもそも2〜3割と低く、そこから落とし物に関するヒアリングをして手作業で検索するとなると、1件の対応に8〜10分ほどの時間を要した。マッチング率も1割程度で課題視されていた。
find導入後、電話での問い合わせ数は約200件と80%減り、応答率も約8割に向上した。課題となっていたマッチング率も、find chat経由では約30%と4倍になった。JR九州によると、find導入によって人件費削減効果があることが試算で示されたという。
findの成長は生成AIの進化にも支えられている。和田氏は「これまでは写真を登録する際に落とし物の特徴を入力していましたが、ChatGPTを連携させることで写真の登録時に自動で特徴が入力されるようになりました。そこがfindが波に乗ったところだと実感しています」
その後、タクシー会社や百貨店、羽田空港などさまざまな交通インフラ企業への導入を進めていき、findが「鉄道業界の頂点」としてアプローチしていた、東日本旅客鉄道(以下、JR東日本)での導入も決まった。
もともと同社は自社で落とし物管理ツールを開発していたため、findは競合企業だった。しかし他社との成功事例を携えて何度も提案を重ね、セキュリティ面含めサービス改善を行った結果、2年半かけて2026年4月からの導入にこぎつけた。
JR東日本は画像登録や検索機能に加え、複数の導入先を横断して落とし物を探せる点を高く評価しているという。
「例えば新宿駅で落とし物をしたときに、これまでは乗り合わせている鉄道会社や百貨店など全てに電話する必要がありました。しかし、いろいろなところにfindの導入企業があることで、横断的に落とし物が探せて、findに問い合わせれば見つかる世界を実現できると思ったんです。2025年内の実装を目指していまして、JR東日本さん含め評価いただいている機能です」(和田氏)
落とし物に悩む多くの企業に支持されているため、紹介ベースで導入先が決まっていく好循環にあるという。試験的な広告費以外の出費はほぼ0円にもかかわらず、現時点で2026年12月の売り上げ着地見込みは15億円に上る。一大市場へと進化していることが分かるだろう。
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