「空間除菌」批判のあとに何が起きたか 二酸化塩素業界の次の一手スピン経済の歩き方(4/6 ページ)

» 2025年11月12日 13時23分 公開
[窪田順生ITmedia]

生き残り戦略

 さて、このような“宣伝文句”を耳にすると、消費者の反応は大きく2つに分かれるはずだ。1つは「なんだ、実生活空間での効果が証明されていないんだったら意味ないじゃん、いらないや」と興味を失うパターン。もう1つは「密閉空間でそれだけしっかりした効果があるのなら、実生活空間でも少しは役に立つのかも」と淡い期待を抱くパターンである。

 こうした層の支持によって市場での存在感を維持しているのが、「二酸化塩素による空間除菌」をうたう製品群だと考えられる。そこで重要になってくるのが「試験の信頼性」である。

 先ほどのブランドサイトで商品ラインアップを見ると、クレベリン置き型1カ月用と2カ月用の2製品の横に「JSA規格 日本二酸化塩素工業会」というマークが掲載されている。JSA規格というのは、「一般財団法人日本規格協会」が発行する民間規格である。

クレベリン置き型タイプの商品ラインアップ(出典:公式ブランドサイト)

 これこそが、業界が信頼回復を図るうえで打ち出した新たな試みである。

 9月1日、大幸薬品など二酸化塩素による空間除菌製品の製造・販売をしているメーカーなどからなる日本二酸化塩素工業会が、「二酸化塩素ガス製品の浮遊ウイルス低減効果を測定するJSA規格を発行〜『適合マーク』制度で、商品選択の客観的な判断基準に〜」というプレスリリースを出した。

換気の少ない半密閉空間内に一定期間にわたり設置して使用する二酸化塩素ガス製品を対象にしており、密閉試験空間(大形チャンバー)内に二酸化塩素ガスを放出させ、その後ウイルスを噴霧して二酸化塩素ガスと作用後、感染性のあるウイルス数を測定します。その結果を、二酸化塩素ガスと作用させない対照試験と比較して99%以上の減少が認められた場合に効果があると判断します(プレスリリースより)

 これまで二酸化塩素による空間除菌をうたうメーカーでは、各自で設定した試験条件・方法で製品の有効性を評価していた。その結果、製品ごとの表示に差が出て、消費者が正しく判断するのが難しくなった。また、自社だけの試験結果を大げさにうたう悪質なメーカーが問題視されることもあった。

 それを今回、業界として「規格化」し、「適合品マーク」を付けることで、この測定方法を広め、消費者の判断に役立ててもらおうというのである。

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