二酸化塩素によるものに限らず、「置くだけホニャララ」をうたう製品には消費者庁から厳しい目が向けられている。2025年8月、「ファブリーズ」(P&Gジャパン)の「お風呂用防カビ剤」がやはり優良誤認で措置命令を受けた。
「お風呂に置くだけで黒カビを防ぐ」「防カビ効果は約6週間持続します」「自然発想成分“BIOコート”テクノロジーがお風呂場の隅々にまで広がり、天井や床や掃除しにくい場所などを有効成分でコーティングし、黒カビの成長を防ぎ続ける」などの表示が問題になったのだ。
9月22日にP&Gが出した謝罪文では、「現在販売中の商品については、2年以上前に商品パッケージ等を変更しており、今回の措置命令の対象外です」となっており、ファブリーズのブランドサイトを見ても、「ボタンを押してお風呂に置くだけ、掛けるだけでお風呂を消臭してカビ臭を防ぐ『ファブリーズお風呂用消臭剤』」と記載されている。
P&Gのような世界的企業でさえ、消費者庁から「防カビ」について注意されると慌てて「カビ臭を防ぐ」にするなど、「表示」というのはどうしてもその場しのぎの対応になりがちだ。そんな中で、なぜ二酸化塩素による空間除菌業界は真正面から「公正競争規約の認定を得る」という方法を選んだのか。これはあくまで筆者の見解だが、正攻法で取り組むことが望ましいという事情があるのかもしれない。
二酸化塩素工業会の会員企業をみると、製薬や基礎化学品など扱う堅実な企業が多い。つまり、一般消費財メーカーならば当たり前にやっている、有名タレントを起用して効果を漠然と訴求するような手法を取ると、批判を招き、本業や他の製品への影響が出るかもしれない。派手な宣伝よりも、正攻法で信頼を積み上げる方向を模索しているようだ。
そう遠くない未来、「公正マーク」の付いた商品が店頭に並ぶ日が来るのか。それとも市場から静かに姿を消すことになるのか。二酸化塩素業界のチャレンジの行方に注目したい。
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。窪田順生のYouTube『地下メンタリーチャンネル』
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受
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