では、JR東日本は今後どうすればいいのか。いま訴求すべきは、「ペンギンが居なくなるのも当然だ」と感じさせるような「Suicaが変わる必然性」だ。喪失感以上のメリットを示さない限り、いつまでも事態は打開しないだろう。
そもそも、Suica Renaissanceはイバラ道である。すでにキャッシュレスの決済手段はあふれており、とくにコード決済は群雄割拠。これまで「タッチするだけ」でのスムーズな乗車・購買体験が売りだったが、今後は「スマホのロックを解除して、アプリを開き、コード画面を見せる手間」が必要となる。従来のタッチも残るとはいえ、新機能で利便性が改善しているとは言えない。むしろteppayなる新ブランドが加わることで、より難解なユーザビリティーになる可能性すらある。
ペンギンが消えた上に、機能面のメリットもよく分からない……。そうなれば、“Suica離れ”も時間の問題だ。続報として「圧倒的な加盟店数」「ポイント高還元」など、利便性でのアピールポイントが伝わらない限り、ユーザーの印象は「かわいいペンギンを無情にも切り捨てた企業だ」といったネガティブなものになってしまう。
とはいえ、まったく好印象を得られないというワケではない。現状では「他社に追随するための変更」でしかないが、そこに「Suicaならではの独自性」が加われば、話も変わってくる。
例えばSuica Renaissanceには、Suicaをタッチせずとも、顔認証などで改札を通れる「ウォークスルー改札」(PDF)の導入方針も盛り込まれている。こうした先進性と利便性を兼ね備えた新サービスをうまく訴求できれば、JR東日本にも光明が見えてきそうだ。
その際に欠かせないのが、ネットの声だ。ペンギン卒業を巡っても、その反響の大きさを予期できていれば、事態は変わっていたはずだ。冒頭に紹介したように、新キャラクターについては、ユーザー参加型の選考が予定されている。ここでしっかり「新たなSuicaの方向性」と「それに見合ったブランドイメージ」を訴求できるかが勝負になるだろう。
かつてJR東日本は、山手線の「品川新駅(仮称)」の駅名を公募するも、130位(36票)の「高輪ゲートウェイ」に決定して大ブーイングを浴びた。「民意を無視している」と感じさせると、どんな印象を残すのか。大企業ゆえに、より慎重に消費者とコミュニケーションを取る必要がある。
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