「21歳従業員に100万円超のボーナス」「残業ゼロ」 岐阜の老舗企業が“手厚すぎる”労働環境を整えたワケ(3/4 ページ)

» 2025年11月29日 05時00分 公開
[鬼頭勇大ITmedia]

「生産性は、数字じゃ測れない」

 ここまでは社内向けの施策だが、地域住民に対する取り組みにも注力している。2021年には、地域の子どもたちが集まる拠点になれば、という思いで社内の一角に「駄菓子屋」を設けた。その後、子育て中の従業員が必要なものを買って帰れたら便利だという考えから、駄菓子以外も扱うように。

 そうした輝光氏の思いが結集したのが、2024年にオープンした「TWR複合施設」だ。会社周辺の土地を買い取り、駄菓子屋や自社ブランド品を扱うショップ、さらにカフェも併設した地域の拠点としてにぎわいを見せている。この11月には、近くの学校を借り、6000発の花火を中心としたイベントも開催した。数千万円もかかったイベントで、当日は1万を超える人が集まったという。

TWR複合施設

 なぜ、ここまでするのか。

 「いま、日本で自分が勤めている会社が好きな人って、3割もいないんじゃないかな。嫌いとまではいわないけど、どうでもいいと思っている人が多いはず。でも、うちはそうじゃない。だから、どんな仕事も受けられるし、それがお客さまからの信頼にもつながってると思う。

 生産性って、DXだとかそういうんじゃないし、数字で測れないものだから。例えば、タイムカードを押してもすぐに帰らず『ちょっと話していこうかな』と思えるか。辛い思いを周りに共有して、解消できるか。この回数が多いほど、生産性って上がると思うよ。お金とかももちろん大事だけど、それだけじゃ、もっといい条件の会社があれば流れちゃうからね」

カフェの内部

 そうは言うものの、坂口捺染ではしっかり金銭面でも従業員に還元している。業績は右肩上がりで成長を続け、2025年度11月期の売り上げは11億円ほど。輝光氏が専務に就任して経営に携わり始めた2010年ごろは約1.5億円だったのが、7倍近くに増えた。利益率は約2割を見込む。その分、21歳の従業員に100万円超のボーナスを支給するなど、しっかりと賃金でも満足できる環境を整えている。

 求職者の中には、岐阜県内だけでなく北は北海道、南は沖縄から、引っ越しを前提に問い合わせてくる人もいるというから驚かされる。人手不足に悩む多くの会社が学ぶべきヒントが、地方の中小企業に眠っている。

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