部下「計画をAIに作らせました。チェックしてください」 上司のあなたはどう答える?「キレイごとナシ」のマネジメント論(2/4 ページ)

» 2025年12月03日 08時00分 公開
[横山信弘ITmedia]

AIに「ドラフト作成」を任せてはいけない理由

 結論から言おう。AIに叩き台(ドラフト)を作らせてはいけない。ましてや完成品を作らせるなど論外だと私は考えている。

 「え? AIって、そういうことに使うものじゃないの?」

 そう思った人も多いだろう。世間ではGeminiやChatGPTが話題だ。

 「AIに企画書を作らせたら5分でできた」

 「提案書の下書きをAIに任せたら効率が10倍になった」

 そんな話がSNSにはあふれている。しかし、私はあえて問いたい。

 「それで、あなたは成長しましたか?」

 AIが作った計画書を提出して、上司に褒められた。プロジェクトも承認された。結果オーライだ。しかし、その過程であなたの頭は動いたのか。あなたの思考力は鍛えられたのか。答えはノーだろう。

 AIに叩き台を作らせることの最大の問題は、「考える機会」を奪ってしまうことだ。

 計画書や企画書を一から作る作業は、確かに面倒だ。構成を考え、情報を集め、論理を組み立てる。時間もかかるし、頭も使う。しかし、その「面倒な作業」こそが、ビジネスパーソンの「計画力」や「企画力」を鍛える。

「汗をかく」プロセスが成長を生む

 冒頭の商社の部長は、部下にこう言った。

 「AIに叩き台を作ってもらうのではなく、AIに叩いてもらえ

 部下はキョトンとしていた。部長は続けた。

 「君が汗をかいて作った計画書を、AIに批評させるんだ。順番が逆なんだよ」

 これが、AIの正しい使い方である。

 自分で考え、自分で構成を練り、自分で文章を書く。その過程で頭をフル回転させる。そうやって作り上げたものを、最後にAIという「辛口の評論家」に見せる。すると、AIは遠慮なく指摘してくる。

 「この論理展開は飛躍しています」

 「市場分析とターゲット設定の内容が重複しています」

 「経営陣の視点で見ると、ここが懸念点になります」

 人間だと忖度(そんたく)してしまうような厳しい指摘も、AIは容赦なくしてくる。その指摘を受けて、自分で修正する。このプロセスを繰り返すことで、思考力が鍛えられるのだ。

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