「AIリストラ」に逆行 “人間不要論”が広がる一方で、あえて採用増やす企業の狙い(1/3 ページ)

» 2025年12月12日 08時00分 公開

著者:芦野成則

レバテック株式会社 リクルーティングアドバイザー

一橋大学を卒業後、官公庁に5年半勤務し、2019年にレバレジーズに中途入社。企業の採用支援を行うリクルーティングアドバイザーとして、多角的な視点から採用支援を実施

 2023〜2024年にかけて、「生成AIが仕事を奪う」といった議論がSNSやニュースをにぎわせました。大手企業の人員削減がニュースで取り上げられ、「AIリストラ」というワードが話題になるなど、採用抑制に踏み切る動きが相次いだことは事実です。

 しかし、採用市場のデータや企業の動き全体を俯瞰(ふかん)すると、こうした流れは一面的な捉え方に過ぎません。生成AIの台頭を受けて人員削減に動く企業がある一方で、AIを起点に新規事業を立ち上げたり、AI関連領域への人材投資を強化したりする企業も増えています。

 本稿では、生成AIの普及によって変化した採用動向を整理しつつ、「AIを契機に採用を加速させる企業の特徴」「AI時代にIT人材へ求められるスキルの変化」を解説していきます。

r 提供:ゲッティイメージズ

AI時代に“人を増やす企業”の共通点

 AIによる自動化が進む中でも採用を拡大する企業には、いくつか共通点がみられます。

 例えば、ある大手インターネット企業では、AIリテラシーを「全社員に必須の基盤スキル」と位置付け、全社的なリスキリングプログラムを展開。AIを業務効率化のためのツールにとどめず、新規事業開発やサービスモデル刷新の中核として活用し、AIが前提となる組織文化そのものを育てています。

 また、品質保証を専門とする企業では、AI生成物の精度や安全性を検証する 「AI品質監査」という新職種を新設。専任チームを立ち上げ、大規模な採用を進めています。大手IT企業においても、AI・データを軸とした事業変革を見据え、間接部門の再配置と並行してAI関連ポジションの採用が増加しています。

 これらの企業に共通するのは、AIを単なる効率化ツールではなく、事業拡大と競争優位を生み出す中核的な価値創造手段として位置付けている点です。AI導入を機に役割や責任領域を再設計し、人材投資を強化することで、事業成長と市場での優位性を獲得しようとしていることがうかがえます。

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