ハイブリッド→EVシフトは進むのか 中国市場で好調、トヨタの戦略（2/4 ページ）

[山口伸，ITmedia]

リスク分散で、特定車種にこだわらなかった

　トヨタはこれまでハイブリッドが好調だった。2024年度のハイブリッド車販売台数はグローバルで約431万台と、BEVをはるかに上回る。そもそも、同社は「マルチパスウェイ戦略」を採用しており、特定の車種にこだわらなかった。マルチパスウェイ戦略とは、カーボンニュートラルに向けてBEVやPHEV（プラグインハイブリッド）、ハイブリッド車、水素自動車など各ラインアップを拡充する取り組みで、リスクを分散する狙いもあったとみられる。

　後述の通りトヨタは中国市場でEVに出遅れてしまったが、北米ではハイブリッド車の人気が高まり、業績は好調だ。中国ではガソリン車販売で日産・ホンダのように大打撃を受けていない。日産はハイブリッド車を軽視していたため売れる車がなく、先手を打ったEVも開拓しきれなかった。ホンダも北米のハイブリッド車販売が堅調だが、注力するEVでは売れる車を開発できず、苦戦している。トヨタはマルチパスウェイ戦略でリスク分散に成功したわけだ。

改良も行ったが、市場自体が低調に

　EVに話を戻すと、国内では日産・リーフが独走していた市場で2020年代からテスラが台頭するようになった。テスラの「モデルY」は500万円台〜という高価格帯で、オートパイロットや音声コマンドなどの先進的な機能やブランド力が支持されている。一方のトヨタは上表の通り3000台に迫ったが、2024年度には減速している。

　bZ4XとモデルYの上位モデルはともに600万円台後半である。だが、航続距離や充電時間でテスラ車に分があり、性能面でテスラを評価する声が聞かれる。bZ4Xは購入者が少ない分、消費者の中で注目を浴びず、認知度も高まらなかった。

中国で人気のトヨタ「bZ3X（出所：同社公式Webサイト、以下同）

　リーフの売れ行きが失速しているように、国内では「充電設備が足りない」「充電が面倒」「航続距離が短い」などの理由でEV販売が失速しつつある。ブランド力で一部高所得者層に人気のテスラだけが伸びている状況だ。bZ4Xは2025年10月に改良を行い、航続距離を伸ばしているが、国内のEV需要が鈍化する中で苦戦している。