ハイブリッド→EVシフトは進むのか 中国市場で好調、トヨタの戦略(3/4 ページ)

» 2025年12月16日 05時00分 公開
[山口伸ITmedia]

現地企業と協業、価格も抑えて中国市場で存在感

 中国では、BEVやPHEVなどを含むNEV(新エネルギー車)の販売台数が2020年以降、著しく伸びている。販売台数全体に占めるNEVの割合は2021年の15%から、2024年には48%と急成長を遂げ、2025年中には過半数に達したとみられる。

 市場の急激なEV化は供給側の要因が大きい。不動産バブルが崩壊した中国では新たな分野としてEVに投資が殺到。政府による振興策もあり、100以上のEVメーカーが乱立する状況になった。BYDを筆頭に、シャオミなどのスマホメーカーも参入し、国や地方政府が出資するEVメーカーも現れ、価格競争が激化している。景気悪化を前に、海外メーカーのガソリン車を購入できない消費者が安いEVを選ぶようになった。

 また、中国のEVは特にハイブランドで「SDV(ソフトウエアによって定義される車)」が求められるようになった。SDVとは、外部からの通信でソフトウエアを更新でき、コックピットシステムや運転支援システムなどの先進機能を搭載する車両のことだ。テスラ車はSDVの代表格と言える。

 このような状況でトヨタは日本国内よりも早くEVに注力した。2020年に現地の合弁会社を通じて「C-HR EV」を発売。しかし、価格は300万円台後半と高く、普及には至らなかった。2022年に発売したbZ4Xも、約20万元(発売当時のレートで約380万円)という価格が足枷になった。

価格を抑えたことで人気となったbZ3X

 一方、近年はbZ3Xの販売が堅調だ。約11万〜16万元(約244万〜355万円)と価格をBYD並みに抑えたため、売れるようになった。航続距離は約430〜610キロ。SDVの観点で見ると、中国の自動運転スタートアップ「Momenta」と共同開発した市街地向けの先進運転支援システムを搭載している。同システムは自動運転レベル2に相当するという。

 システム面では現地企業の力を借りることで、トヨタは中国EV市場の土俵に立った。2026年春に発売予定のセダン型EV「bZ7」にはファーウェイのコックピットシステムを搭載する予定だ。中国では現地の技術を活用したEVで攻めようとしている。

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