日本におけるECの代表企業を見てみましょう。
楽天は、EC、金融、通信、サービスを組み合わせた経済圏の拡大を進めてきました。広告事業も顕著な拡大を遂げています。一方で、物流やモバイル事業を含む固定費の重さが収益性の課題として表面化しています。
ここから見えるのは日本市場特有の制約です。人口動態、物流コスト、人件費、価格競争の厳しさなどにより、海外と同じ成長モデルをそのまま適用することは難しくなっています。ただし、会員基盤とデータを軸に複数サービスを統合する戦略自体は、今後のECの方向性を示しています。成長の鍵は規模拡大ではなく、IT投資とオペレーション効率の再設計にあります。
次にIDとデータが生む競争力を有する代表企業であるLINEヤフーについて整理します。
LINEヤフーの強みは、EC単体ではなく、検索、メディア、決済、コミュニケーションを横断するID基盤にあります。ECの競争軸は「商品数」や「価格」から、ユーザー理解の深さへと移行しています。その点で、購買前後の行動データを一気通貫で把握できる点は大きな差別化要因です。ECが「モール」から「データ活用のハブ」へ変わる中で、IDを握る企業の優位性は今後さらに高まるでしょう。
一方で、小売企業たちの戦略はどうでしょうか。これまで、店舗主体である小売業のECではいくつもの大手企業がEC事業に苦戦し、撤退した企業もありました。物流費を価格に転嫁すると顧客が離れ、物流費を自社で負担しては収益が維持できない。かといってモール型ECに商品提供しても、手数料や物流費の問題で赤字となっている企業が少なくありません。
よって自社ECを強化していくしか道はなく、前述したEC専業企業の強さにかなう術が見定まっていない現状です。EC単体では勝負にならず、やはり店舗を保持しているという最大の強みを生かして、店舗とECを連携し、店舗在庫からのスピーディな配送、店舗で体験提供・ECでリピートを促す――というような「小売業ならでは」のモデルを構築する以外に勝ち筋はありません。
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