吹替版公開時の上映館数は全国で約75館、東京都内で9館と少なめな数字だった。国内の大手アニメ作品はおおよそ300館以上で上映される。2025年11月に公開された、日本でも人気の中国アニメ映画『羅小黒戦記2 ぼくらが望む未来』が約150館で公開されていることを踏まえても、控えめな印象だ。
筆者は公開初週の週末、新宿で午後6時台の回を鑑賞したが、客席の埋まり具合は半数ほどだった。北米では公開後に3週連続TOP10入りを果たしたようだが、上映館数と埋まり具合だけを踏まえると「やっぱり中国アニメは、日本であまり流行らないんじゃないか?」と思う方もいるかもしれない。
しかし、中国での『ナタ』のヒット現象を見るに、日本映画市場の上位に中国アニメが食い込む日も近いという予感が、筆者にはある。
それはなぜか。注目すべきは、中国で『ナタ』が、日本で言う『鬼滅の刃』のようなブームを巻き起こしていたことだ。
中国メディアCGTNの記事によると、『ナタ』の人気は映画自体にとどまらず、キャラクターグッズの買い占めが起こるほどの流行ぶりだったという。餃子監督が自らデザインを手がけたグッズはオンラインショップで5000万元(約11億円)を売り上げ、映画と関連する実在の地域でも観光需要(日本で言うところの聖地巡礼だ)が高まるなど、キャラクターIPとして幅広い経済効果が生まれている(参照:JETRO「成都発の大ヒットアニメ映画『ナタ2』の興行収入、100億元突破」)。
実際、『ナタ』がこれまでの中国アニメ映画と大きく違っている点に、キャラクター作品としての圧倒的な親しみやすさがある。
中国で好成績を収めて日本に輸入されたアニメ映画は『白蛇:縁起』(2021)、『ナタ転生』(2021)、『雄獅少年/ライオン少年』(2023)、『ヨウゼン』(2025)など近年でいくつもあった。キャラクターデザインは実写に近いリアル志向な作風が多いのが特徴だった。
そんな中で『ナタ』は、ディズニー・ピクサーが得意とするようなデフォルメされたポップなキャラクターが作品の世界観をリードしている。描かれるテーマは誠実でまじめだがコミカルなギャグシーンも多く、全体のトーンとしては軽快だ。ファミリー向け作品としてさまざまな形で人気が出るのも頷ける。
日本での展開でも、この大衆向けIPとしての魅力を最大化する工夫が施されている。字幕翻訳にはRPGゲームなどで中国神話を現代エンタメとして分かりやすく伝えてきた経験のある、中国史学者の檀上寛氏を起用。神話特有の世界観を日本の観客にも親しみやすい形で届けるローカライゼーションが図られている。
そんな『ナタ』の商業的成功を受けて、類似傾向のある中国アニメが増えていく可能性も高い。キャラクタービジネス最盛の日本市場で、中国IPが社会現象を巻き起こす日が来ても、決しておかしくはないのだ。
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