AI関連インフラの急拡大に伴う世界的なメモリー半導体不足が、スマートフォン市場に影響を広げている。業界では、米AppleがiPhoneを値上げするのか、それとも利益を抑えて価格を維持し、新規顧客の獲得を優先するのかが焦点になっている。
Appleは1月29日、iPhone17シリーズに対する需要を背景に売上高が力強く伸びるとの見通しを示した。ただティム・クック最高経営責任者(CEO)は投資家に対し、メモリー半導体価格が急上昇するとみる一方、値上げで対応するかどうかというアナリストの質問には答えなかった。
クック氏は「われわれが駆使できる手段はさまざまで、それらの成功度は未知数だが、選択肢は複数存在する」と説明。ライバルが供給制約で値上げを迫られるなら、Appleがメモリー半導体の供給不足を逆手に取り、価格を維持してiPhoneとPC「Mac」シリーズの市場シェアを伸ばせるのではないか。そんな見立てについても、同氏は踏み込まなかった。
複数のアナリストの見立てでは、Appleはメモリーの供給が逼迫(ひっぱく)しても、他の小規模なスマホメーカーと異なり、韓国のサムスン電子やSKハイニックス、米Micron Technologyといった長年取引してきたサプライヤーを通じて十分な半導体を入手できるという強みがある。
Appleの決断は、極めて広い範囲に影響を及ぼしそうだ。推計によれば、同社は2025年、出荷台数が約10%増え、世界のスマートフォン市場を主導した。
競合他社がアナリストの予想通りスマホ価格を引き上げた場合、Appleが価格を据え置けばiPhoneの魅力は一層高まる。逆にAppleが値上げすれば、競合他社は追随する余地が生まれる。
米IDCのシニア調査ディレクター、ナビア・ポパル氏は「これは業界が目下直面する最大の問題で、諸刃の剣でもある。Appleが値上げしなければシェア拡大に役立つが、投資家を動揺させることにもなる」と指摘した。
IDCのデータによると、競合各社が直面するメモリー半導体の不足は、2026年、世界のスマートフォン市場が年間で縮小する一因になる見通しだ。年間での減少は、2023年以来になるという。
スマホ用半導体世界最大手の設計会社で、高価格帯のAndroid端末の主要サプライヤーでもある米Qualcomm(クアルコム)は4日、スマホ顧客におけるメモリー半導体不足により、業績が市場予想に届かないとの見通しを示し、こうした懸念をさらに助長した。
クアルコムのアカシュ・パルキワラ最高財務責任者(CFO)は、中国の主要顧客については、需要は堅調なのに携帯電話を組み立てるのに十分なメモリー半導体を確保できていないと述べ「特に中国におけるOEMで、携帯電話の生産計画と流通在庫を減らす動きが見られる」と語った。
クアルコムの電話会議では、アナリストらがAppleに言及。米Melius Research(メリウス・リサーチ)のベン・ライツェス氏は「Appleが引き続き、利用可能なDRAMの過大なシェアを獲得し続けるように見える」と述べた。
供給に関する機密事項について触れるため匿名を希望したあるベテランのスマホ業界幹部は、Android搭載スマホのメーカーはAppleが値上げするかどうかを慎重に見守っていると明かす。
同幹部は「Appleがメモリーの値上がり分を自社で吸収し、端末価格を据え置けば、相対的にAndroid端末の値上げが目立つ。メーカー各社が見込む販売台数を確保できるかは不透明になる」と述べた。
一方で、値上げは避けられないとみるApple投資家もいる。米Synovus Trust(シノバス・トラスト)のポートフォリオマネージャー、ダン・モーガン氏は「Appleは概して競合より優先される。しかし市場の供給不足と無縁というわけではない」と述べ「新しいiPhoneの投入の度に、値上げを続けるだろう」と付け加えた。
サムスンの出方も流れを左右する可能性がある。アナリストは、同社の携帯電話部門が別のサムスン部門からメモリーを調達できるため、メモリー価格の上昇を吸収できる可能性があるとみている。米調査会社eMarketerのアナリスト、ガジョ・セビリア氏は「Appleとサムスンの双方を注視している。彼らが値上げすれば、上限が引き上がり、他のメーカーも価格調整を迫られるだろう」との見通しを示した。
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