米国のテクノロジー業界は、需要の高い時間帯に電力使用量を抑制するよう迫られている。大手IT企業がデータセンター拡張のために必要とする膨大な電力が、国内の電力網の限界に達しつつあるとの懸念が高まっているためである。
目的は、電力需要が年間で最も高まる日や時間帯における停電や電気料金の急騰を回避することである。シリコンバレーにとっては、潜在的な危機回避につながる柔軟性の向上が、新設データセンターの電力系統への接続契約をより迅速に獲得する一助となる可能性がある。
データセンターの柔軟性向上の取り組みは、現時点では主に実証段階(パイロット段階)にある。このプロセスは複雑であり、データセンターが24時間稼働し続けることによる経済的インセンティブは極めて大きい。米ITコンサルタント企業Heunetsの試算によれば、データセンターが停止した場合、テクノロジー企業には1分当たり約9000ドルの損失が生じる。
電力研究所(Electric Power Research Institute:EPRI)の最近の調査によれば、データセンターによる電力消費は今後10年以内に4倍以上に増加し、米国の電力供給の最大17%を占める可能性がある。
「問題は電力網上の電子(電力)の量ではなく、需要がピークに達したときに供給できるかどうかである」と、米エネルギー省のクリス・ライト長官は今週ヒューストンで開催されたCERAWeek会議で述べた。
「電力需要が大きく増加した場合、供給が需要に追いつかなければならない。そうでなければ人命に関わる」
この冬発生した嵐の際、米エネルギー省は国内最大の地域送電網であるPJMインターコネクション(PJM Interconnection)の管内にあるデータセンターに対し、電力網の負荷を軽減するため、バックアップ発電機での稼働を指示した。
世界最大のデータセンター市場を抱えるPJMは、需要が新規供給を上回り続けた場合、早ければ来年にも供給不足が発生すると予測している。
「この課題を柔軟に管理する方法を見出すことが、業界として乗り切る鍵である」と、PJMインターコネクションの最高執行責任者(COO)スチュ・ブレスラー氏は述べた。
米デューク大学ニコラス環境・エネルギー・持続可能性研究所(Nicholas Institute for Energy, Environment & Sustainability)が先週公表した研究によれば、地域の電力網が限界に達した際に対策を講じることで、今後10年間で400億〜1500億ドルの設備投資を削減できる可能性がある。これにより、データセンター向け電力網整備に伴うコスト負担が家庭や中小企業に転嫁されるのを抑制できる。
コスト上昇や停電への懸念を和らげるため、データセンター投資家およびエネルギー供給者は、電力会社や系統運用者の要請に応じて電力使用を抑制できることを示す必要があるとしている。これは電力業界で「ディマンド・リスポンス」(需要応答)と呼ばれる運用手法である。
「デマンドレスポンスは解決策の一部でなければならない」と、データセンターの開発、投資を行う米Carlyleの国際エネルギー部門最高投資責任者(CIO)マット・オコナー氏は述べた。
同氏は「現在見られ始めているのは、大口需要家がその仕組みを理解し、データセンター運用の中に織り込めるようになることだ」と指摘した。
歴史的に、データセンターはディマンド・リスポンスに参加してこなかった。業界関係者によれば、単一拠点でデータを保管する従来型クラウドデータセンターは、データの完全性を維持するために安定した継続的な電力供給を必要とする。一方で、現在建設が進む人工知能(AI)向けデータセンターは、より柔軟性を備える可能性があり、エネルギー集約的な大規模言語モデル(Large Language Model:LLM)の学習処理を複数拠点間で移動できるとみられる。
テクノロジー企業は、データセンターのワークロード(処理負荷)を移動させる、すなわちエネルギー集約的な処理を他の施設に振り分ける、あるいはピーク時には電力網からの供給ではなく、バックアップ電源に切り替えるといった取り組みを進め始めている。
米Googleは最近、要請に応じて特定のデータセンターの消費電力を削減する契約を複数の電力会社と締結したと発表した。米NVIDIAも今週、電力需要が急増した際にサーバファームの電力消費を制御・移転するため、米Emerald AIとの取り組みを発表した。
また今週、EPRIは米Metaを含む数十社の電力・テクノロジー企業の協力を得て、データセンターの柔軟性向上に向けた枠組みを公表した。この取り組みにより、データセンターの系統接続に要する期間の短縮が期待されている。
エンジニアリングおよび建設企業の米Black & Veatch社で副社長補佐を務めるジェニファー・ケイヒル氏は、顧客である電力会社やテクノロジー企業の間で、データセンターの柔軟性向上に関する関心が高まっていると指摘する。
「誰もが実現したいと考えており、その方法を模索している移行期にある」とケイヒル氏は述べた。
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