生成AIの活用が広がる一方、その裏側では半導体素材、空調・冷却、電力、通信インフラといった領域で、日本企業が着実に存在感を高めている。生成AIサービスを提供する企業だけが主役ではない。昨今、AIインフラを担う企業群にも、注目が集まっている。
生成AI関連市場が盛り上がりを見せる中、どうやって儲かる分野を見極めていくか──。各分野のキープレイヤーへの取材から、自社の戦略や投資判断にも生かせる「勝ち筋」を探る。
第1回:経済産業省
第2回:レゾナック・ホールディングス
第3回(予定):ダイキン工業(本記事)
第4回(予定): マクニカ
第5回(予定):フジクラ
生成AIの進化が目まぐるしい。画像や動画の生成、自動運転、ロボティクス分野での活用など、より高度な処理が可能になる裏で、それを動かすチップやデータセンターの在り方が大きく変化している。チップは複雑化し、発熱量は増加。データセンターの規模は拡大し、その冷却技術も転換点を迎えている。
こうした中、生成AIを動かす“インフラ”として存在感を強めているのが、空調大手のダイキン工業だ。家庭用エアコンや業務用空調機のイメージが強い同社だが、北米を拠点にデータセンター冷却事業を強化してきた。2023年の売上高は約230億円。2025年には約1000億円に上る見込みで、2030年には約3倍の3000億円以上を目指す野心的な目標を掲げている。
本記事では、空調設備を提供する企業から「生成AIインフラの中核」へと踏み出した、ダイキンの戦略に迫る。
データセンターの冷却は現在、大きく4つの技術に分類される。
まず基本となるのは、冷気を送り、熱を放出する「空調」による冷却だ。壁面に空調設備を設置し、部屋全体を冷やす手法を「大空間冷却」と呼ぶ。CRAC(空調機)やチラーを用いたこの方式は、多くのデータセンターで採用されてきた。
「サーバ冷却」はチップが格納されたサーバのラックごとに冷却する手法。「リアドア式」と呼ばれる、各サーバラックの後方から冷風を吹きつけて冷やす方法が一般的だ。
部屋を冷やすだけでは対応しきれない、サーバ内の「熱だまり」(冷却能力の不足やムラ、特定のサーバの高温化)を解決する。
発熱の大きいチップに、冷却液が流れる金属板を密着させてチップを直接冷却液で冷やす方法。チップが高性能になる中で、高温化のリスクが高まっている。温度が上がった特定のチップを、スポットで急速に冷やせるこの技術を初期設備として採用したり、追加導入したりするケースが増えているという。
サーバを液体に丸ごと浸して冷却する方式。比較的新しい技術であり、ここ2〜3年ほどで開発が進んだという。
ダイキンはまだ液浸に関わるサービスを提供していないが、2025年11月に実施した「データセンタ市場における事業戦略説明会」の質疑応答の中で、商品化は未定であるが技術開発は進めていると話している。
生成AIブームが起きる前は、空間を一定の温度に保つことができれば問題はなかった。しかし、複雑な処理が増え、チップが高性能化した現在は、データセンターにおける発熱量が増加。チップの高温化は、故障や性能低下を招くリスクがあり、データセンターを問題なく動かし続けるために、冷却の在り方を見直す動きが広がっている。
「サーバラックがじんわり熱くなるのではなくて、特定のサーバやチップが突然、何らかの高度な演算や処理をした際、急激に高温になるのが『熱だまり』と呼ばれる現象です。どのチップがこの後どんな演算をするのかは、予測ができません。そのため、部屋全体を冷やす程度の冷やし方だと熱が蓄積されてしまい、これがチップ故障の原因につながってしまうのです」(アプライド・ソリューション事業本部 桑原智美さん)
空調に関しては、技術や設備そのもの自体が大きく変化しているわけではないと、アプライド・ソリューション事業本部の施鋒(シ・ホウ)副本部長は話す。「設備そのものは今までのものと大きく差はない一方で、ここ数年、データセンターの規模は劇的に巨大化しました。それに伴い、空調設備のサイズも桁違いに大きくなっています」
機材の高騰も続く中、データセンターの設備そのものも、とても高価になっている。故障が起きたときの損害は大きく、冷却設備の重要性が増しているのだ。
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