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ピュレグミは分かるけど会社名は知らない……カンロを「過去最高益」に導いた“自社のファン作り”戦略(1/3 ページ)

» 2026年04月24日 08時00分 公開
[濱川太一ITmedia]

本記事の内容は、RX Japan(東京都中央区)が4月8〜10日に開催した「Japan DX Week」内で実施されたセミナー「【ファン化×EC事業戦略】2桁伸長を続ける『KanroPOCKeTオンラインショップ』」の内容を要約したもの。


 「ピュレグミ」や「カンデミーナグミ」で知られる菓子メーカー・カンロ。近年のグミブームを追い風に、2025年度の売上高・利益はともに過去最高を更新した。

 しかし、好調な業績とは裏腹に、ある課題を抱えていた。

 カンロは国内市場において、あめなどハードキャンディカテゴリで1位、グミカテゴリで2位のシェアを獲得した。国内キャンディ市場におけるメーカーシェアでも1位となったものの、その割合は10%強。同社マーケティング本部チーフマネージャーの武井優氏は「キャンディ市場には圧倒的に選ばれるブランドがなく、消費者は店頭でメーカーを意識せずに商品を買っている」と分析する。「ピュレグミ」は知られていても、会社名のカンロは知られていないのが現状だ。

kanro カンロの商品群(プレスリリースより引用)

 こうした課題意識から、カンロは商品ではなく自社のファン作りに注力し始めた。コロナ禍をきっかけにECを本格化させ、ファンを招待するリアルイベントの開催や、ファンと社員の対話を志向したコミュニティーサイトの立ち上げなど、試行錯誤を重ねながら取り組みを続けており、効果は売り上げにも表れ始めている。カンロのファン作りにおける、これまでの道筋を聞いた。

kanro カンロ マーケティング本部 チーフマネージャー 武井優氏(筆者撮影)

コロナ禍の「在庫処分」から始まったEC

 ブランドと顧客の接点が希薄な状況を改め、全てのブランド体験を「カンロ」という軸で統合する。そのための「最大の顧客接点」としてカンロが据えたのが、2021年8月にオープンした自社ECサイト「KanroPOCKeT」(カンロポケット)だ。

 会員数は2024年実績で24万人。伸長を続けるカンロポケットだが、その立ち上げは必ずしも当初から綿密な構想が描けていたわけではなかったという。

 カンロポケット開設のきっかけは2020年、コロナ禍で同社の直営店「ヒトツブカンロ」が休業に追い込まれたことだった。

 行き場を失った在庫をどうにかしなければならない。同社は当時、アンケートフォームと銀行振込というシンプルな形でECを始めた。スタッフが手作業で商品を梱包・発送する地道なスタートだったが、思いがけず反響を呼んだ。

 「ここにECの芽がある」。そう確信した同社は、カンロポケットを単なるECサイトではなく、デジタルマーケティングの基盤として再定義した。商品情報、コミュニティー機能、カスタマーサポートを一体化した現在の形へと段階的に進化させていった。

DtoCだからこそできる体験

 2022年にデジタルコマース事業部を立ち上げて以降、同社はEC専用商品の開発を進めてきた。eスポーツ選手をサポートするためにゲーミングチームと共同開発したグミや、受験生を応援するために人気ペンケースブランドとコラボした商品、110周年の記念パッケージをあしらった商品などを販売。しかし、思うような結果につながらず、初期には失敗もあったという。

 こうした試行錯誤の末、新コンセプト「アメージンググカンロ」にたどり着いた。一般流通では物流コストや賞味期限の制約から、社内に眠る技術やアイデアを出し切れないもどかしさがあったという。それをDtoCの力で解放しようという試みだった。

 新コンセプトの象徴的な商品となったのが「ホシフリラムネ」だ。星空をイメージした瓶の中に、顧客自身がラムネを詰め、自分だけの星空を作るという「体験とストーリー」をセットにした商品だ。2000円という強気な価格設定ながら、初回生産分はわずか9日間で完売した。

kanro ホシフリラムネ(プレスリリースより引用)

 また「クラゲって食べるとおいしそうだよね」といった社内からの発案をもとに、クラゲをモチーフにした「シークラゲグミ」を展開するなど、既成概念にとらわれない商品がファンの心をつかんでいった。

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