「終わった」と言われたサンマルク V字回復に導いた戦略とは長浜淳之介のトレンドアンテナ(4/6 ページ)

» 2026年05月03日 05時00分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

M&Aも積極的に実施

 コロナ禍での資金調達に成功した藤川氏は、守りにとどまらず攻めに転じた。これまでM&Aに積極的なイメージがなかったサンマルクHDだが、2024年11月、牛カツ業態で業界トップの京都勝牛を展開するジーホールディングスを買収し、傘下に収めた。

牛カツ京都勝牛(筆者撮影)

 さらに翌12月には、業界2位の牛かつ もと村を展開するB級グルメ研究所などをファイブグループから買収。わずか1カ月の間に、牛カツ業界の上位2ブランドを取り込む異例の動きを見せた。

 この連続買収は外食業界に衝撃を与え、その狙いを測りかねるとの声も広がった。しかし藤川氏は、「京都勝牛のM&Aが成立すれば、もと村も買収するつもりだった」と、当初からの構想であったことを明かした。

 牛カツ2社の買収の狙いは、商業施設への出店において、同一業態のブランドを複数持つことで、競合の参入余地を狭めることにある。例えば、隣接するショッピングセンターに京都勝牛が入っている場合、テナント誘致の担当者は「同じブランドは避けたい」と考える。その際に、別ブランドである牛かつ もと村を提案できれば、より幅広い出店機会を取り込むことができる。

牛かつもと村(筆者撮影)

 両者はこれまでライバルであり、業態も近いが、価格帯や提供スタイルなどに違いがあるため、すみ分けが可能だ。大きな商圏であれば、牛カツの複数ブランドを展開することで、幅広い需要を取り込むことができる。実際、京都勝牛は国内約60店舗、海外にも25店舗を展開。一方のもと村は国内約30店舗、海外2店舗と、まだ拡大余地を残している。

 この2ブランドを傘下に収めたことで、サンマルクHDは牛カツ市場の9割以上を握り、事実上の独占状態を築いた。牛カツはインバウンド需要が多く、渋谷、新宿、大阪、京都の店舗は多くの外国人客でにぎわう。アジア圏に加え欧米からの観光客にも人気が高く、海外展開の伸びしろは大きい。牛肉の料理なのでイスラム圏も視野に入り、豚かつよりも有利な面もある。

京都勝牛の牛カツ(筆者撮影)

 こうした需要を見据え、サンマルクHDは2026年5月、本社機能の一部を京都に移転。牛カツのグローバル展開を本格化させる構えだ。これに先立ち、大阪・関西万博にも「京都勝牛」を出店し、国内外への認知拡大を図っている。

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