労働ジャーナリスト。2025年末まで日本経済新聞社に在籍し、編集委員、論説委員、論説副委員長などを務めた。2009〜2021年の12年半、雇用・労働社説を担当。現在は執筆活動および講演活動。複雑な制度の多いこの分野の解説記事を分かりやすく書くことに努めている。日本記者クラブ、日本労働ペンクラブ会員。note「水野裕司のLabor Watch」でも発信。
「管理職」がモチベーション高く働くことができ、若手や中堅社員にとって魅力あるポストになるためには、どうすればよいのか。多くの企業に共通する課題だ。
管理職を志向する人の割合が、過去最低を更新したという調査結果もある。部課長職など組織の要となるポジションの担い手が減れば、企業の競争力や組織運営にも影響しかねない。
管理職の仕事は増加傾向にあり、責任も増している。心身ともに疲弊しがちな現状を打開する知恵が求められている。最近の調査研究からは、職場の部下との信頼関係の構築がカギを握っている様子が浮かび上がる。管理職ポストの再生に向けた効果的な手立てとは。
パーソル総合研究所が毎年2〜3月に実施する「働く10000人の就業・成長定点調査」によると、管理職になりたいと答えた正社員の割合は2026年、16.6%で過去最低になった。ピークの2021年(24.6%)から、5年で8ポイントもの低下だ。
管理職志向の正社員の比率は男性が女性を上回る傾向があるが、注目すべきは男性でこの比率の低下が顕著なことだ。30代男性の場合、集計を始めた2018年は38.3%あった。それが2026年は25.6%と、12ポイント以上低下している。40代男性は2018年が19.0%だったが、2026年は14.1%にとどまった。
20代男性は、2026年が36.8%で前年の34.5%から上昇したが、ピークの2021年(47.7%)と比べると10ポイント以上低い。集計開始時の水準(2018年の44.7%)も下回ったままだ。
職場の上司と日々接するなかで、仕事量やストレスの多さを間近で感じ、最初は持っていた管理職志向が次第になえていく――。パーソル総研の調査からは、日本の会社員のそんな姿が思い浮かぶ。
管理職の仕事の内容は、具体的にどのように変化してきているのか。戦後の大まかな流れをみてみよう。
右肩上がりで日本経済が伸びた高度成長期を中心に、1950〜1970年代は、部下への日々の仕事の指示や、担当部署の業務の管理・監督が主だった。
1980年代になり企業の国際競争が激化してくると、それらの業務に加え、中長期的な観点でのコスト管理や製品・サービスの品質向上が重要な役割になる。社内の組織間の調整にも追われるようになった。
グローバル化やデジタル化が進み始めた1990年代後半以降は、管理職一人一人が、コスト削減など企業の競争力強化への貢献を一段と要求され始めた。個々の社員の適性を踏まえて人員配置を練り、人件費を効率的に使いながらモチベーション向上にもつながるよう部下の処遇を考えるなど、人的資源管理も主要な仕事になった。
そして2010年代からは、人材を価値創造の源泉ととらえる「人的資本経営」が広がり、部下の能力開発など、人材育成が管理職の最も重要な業務の一つになる。キャリア形成支援や部下の心身のケアも欠かせなくなった。このほかコンプライアンス(法令順守)への目配りも近年は必須になっている。
既存業務をこなすだけでなく、新しいビジネスの企画や業務効率化の提案・実践も経営陣から求められている。
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