リテール大革命

「オンライン売上60%超」「Amazonより高く売らない」 英百貨店「ジョン・ルイス」の逆襲劇 がっかりしないDX 小売業の新時代(2/4 ページ)

» 2026年05月21日 06時00分 公開
[郡司昇ITmedia]

Amazonには実現不可能な顧客体験

 JLPが公開している「How we Shop, Live and Look 2025」には、オンライン経由の売り上げが6割を超えることについて、以下のように記載があります。

原文

Physical shops are for more than just buying While the John Lewis website and app account for 60.9% of sales (up 1.5% vs. 2024), this figure is misleading. In a survey of over 1,100 John Lewis customers, only 22% of customers buying substantial items completed the entire transaction online. In the huge majority of cases people who came in store to research a significant purchase did so to try on the clothing, check the size, touch, feel, test our electronics or beauty products. Crucially, 48% cited the experience of simply “wandering around” as the main attraction for visiting, proving that in-store discovery is essential to the modern shopping journey.

翻訳

 物理的な店舗の役割は、単に商品を購入するだけにとどまりません。ジョン・ルイスのWebサイトとアプリによる売り上げは全体の60.9%(2024年比で1.5%増)を占めていますが、この数字は実態を正確に表しているとは言えません。

 ジョン・ルイスの顧客1100人以上を対象にした調査によると、高額な商品を購入した顧客のうち、オンラインだけで取引を完結させたのはわずか22%に過ぎませんでした。大多数の場合、高価な買い物の検討段階で実店舗を訪れた人々は、服の試着やサイズの確認、あるいは電化製品や化粧品に触れ、質感や使い心地を確かめるために来店していました。さらに重要なことに、48%の顧客が来店する最大の魅力として「ただ見て回ること」を挙げています。このことは、現代の買い物体験において、実店舗での「発見」がいかに不可欠であるかを証明しています。

 生活者は店舗で見て、触って、試して、相談し、最後はオンラインで買う。あるいはオンラインで買って、店舗や近隣拠点で受け取る。John Lewisは、この“行き来”を前提に百貨店を再設計したのです。

 これはAmazonには実現不可能な顧客体験です。

「百貨店で買って、食品スーパーで受け取る」強み

 John Lewisは、Click & Collectを早くからサービス設計に組み込んだ企業です。2013年時点で、John LewisのClick & Collect注文は前年比でほぼ2倍になり、クリスマス期にはオンライン売り上げの35%を占めていました。

 この数字は少し古いものですが、英国の百貨店が10年以上前から、オンライン注文の受け取りを店舗網につなげる仕組みを本格化させていたことを語る上で、重要な指標です。

 2023年には、John Lewisの受け取り拠点数は5700カ所に達しました。

 顧客はJohn Lewisで寝具、小型家電、衣料、ギフトを買います。受け取りは百貨店のJohn Lewis店舗だけではありません。週末に食品を買いに行くスーパーWaitroseでも、他の提携拠点でも受け取れます。

 つまり、百貨店の弱点である来店頻度の低さを、食品スーパーの来店頻度で補っているわけです。

 「百貨店で買って、食品スーパーで受け取る」──この動線がグループ内で完結していることが、JLPの強みです。

小売DX Waitrose GREENWICH店(2026年4月筆者撮影)

 配送面でも、Click & Collectによる恩恵があります。衣料、寝具、小型家電、ギフトなどの百貨店商材は、自宅配送の時間指定や再配達が、顧客にも小売業にも負担になります。

 店舗受け取りであれば、顧客は自分の都合で受け取れます。返品や交換も、その場で相談でき、“ついで買い”も起き、さらに店舗スタッフとの接点も生まれます。

 Ocado型の集中センター宅配に対して、JLPは店舗とグループ拠点を受取網に変えました。結果として、John Lewisの単発購入を、Waitroseの週次来店リズムに乗せることができ、百貨店でありながらオンライン比率60.9%という構造を実現したのです。

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